そして、誰もがやりたい放題に話している。


そんな状況が薫にはどうもおかしくて、笑みが零れてしまう。




これが、世に言う『平和』とやらなのであろう。




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「なんか、今日は色々あったねー」


「ごめん、騒がしかったよな?」


二人は帰路を歩いていた。

『恋人つなぎ』で繋がれた手はそれぞれの指をからめあう。


それが薫には嬉しくて、これから始まる悠太との生活に期待を少なからず抱いていた。



「ううん、あれはあれで楽しかったよ?」


「いや、俺は薫のウエディング姿を見られたのが……嫌だった」



「え?!」




「言ったろ?『誰にも見せたくないほど綺麗だ』って…」



「でもっ!式の日はどうせ見られるんだし…」


そういう問題じゃない、とため息をついた。



「今日は俺だけの目に焼き付けたかった」



いかにも残念そうな声で言う悠太に対して、薫は頬を赤らめた。



「う、嬉しいよ!」



悠太の腕を引き寄せるように引っ張って、薫は彼の顔を覗き込んだ。


なんとなく、自分だけが恥ずかしくなっているのも、それはそれで恥ずかしかった。

だから、悠太にたまにはお返ししたいという思いが薫の頭を横切ったのである。



「悠太があたしだけを独占したい、って思ってくれて……嬉しいよ!」