てめぇなんか…嫌いだ!!


「なぁなぁ君、かわええなぁ…俺とどっか行かへん?」

二週間前のこの一言が、アイツとの出会い。

「………誰に声掛けてやがんだ、チャラ男は嫌いじゃボケェエエエ!!!!」

バキィッ

そしてこの言葉が初めてアイツと交わした言葉。
そして、アイツに…初めて触れた日。

気色悪っ…鳥肌ものだ…

あ、あたしはテツ。
アイツを殴った張本人。

春野 炬哲(ハルノ コテツ)

ピンクに染まったショートの髪に、金と赤のメッシュ。
内側は焦げ茶色。
目は日替わりでカラコン入れたりする。
ピアスだらけの耳。
八重歯が片っ方だけある。左な。
口は…相当悪い(笑)

そして…アイツ。
今一番、究極に、最強に、嫌いな奴。

ガラガラガラッ

「みんな〜おはようさ〜ん!!」

来たよ、今日もチョーーーーーうぜぇ入り方。






「炬哲ぅ〜今日も、めっさ可愛いなぁ……」

死ね。マジ死ね。
帰ってくんな、三途の川から。

「なぁ、チューしてえぇ?チュー!!」

「近付くな。近付いた瞬間、お前の頭蓋は消し飛ぶからな」

「そんなつっけんどんに言わんでえぇやんか〜…俺のこと、ほんまは好きやろ?」

「死ね。いいから消えろ。視界から。さもなくばお前の脳天ぶち抜くぞ」

マジきめぇ。
つか、何であのときナンパしてきたコイツ…

榛 夕暮(ハシバミ ユウグレ)

オレンジの緩いパーマをあてたような髪を綺麗にセットして、お洒落な奴。
目はめっちゃ茶色。
いつもふにゃふにゃして、テツに向かって来る。
背はテツと頭二個分。

ナンパ男がここに居るのは何故か…理由はひとつ。

……編入だ。

テツをナンパして、ボコられた次の日、酷い顔で編入してきたのがコイツだった。

テツ、マジ運わりぃ…
このキモ顔をもう一回見ることになるなんて…クソッ!!





「もうっ炬哲はツンデレラかいな〜」

この…ヘラヘラした顔が、すげぇムカつく。
いっつもにこにこして…マジイラつく。

「うっさい。散れ。変態」

テツがコイツと言い合いしてると、

「今日も炬哲にやられてるね〜(笑)」
「榛、いつまで続けんのかねぇ…(笑)」
「二人とも、お似合いじゃない?」
「いや、春野が夕暮のこと嫌いだろ(笑)」
「「「確かに〜(笑)」」」

ぜってぇクラスの奴らがこんなこと話す。

放っておいてくれねぇかな…
ほんとテツ、精神崩壊目前なんだけど…(怒)




「なぁ炬哲…今日は飯、一緒に食おうなぁ〜」

「嫌だ」

「決定やからな〜」

「無理」

「俺、待ってるからな〜」

「キモい」

…何なんだ。
何でテツがこんなに言ってんのに…諦めねぇんだよ!!

「だぁああーー……」

テツは、机に突っ伏した。

「今日も結構やられたわね、榛 夕暮に…ふふっ…」

顔は見てないが、誰かは分かる。

「るせーマリコ。潰すぞ」

テツの幼なじみ、マリコだ。

「あら、そんな台詞、ほざいていいのかしら?」

「…………」

真知田 茉莉子(マチダ マリコ)

すげぇドSで有名だ。(女子の間で)
男子には、媚び売って手なずけて…最後は下僕にする。
美人で、綺麗な黒髪を靡かせてる。
キャンディーが大好き。




テツが顔を上げると、

「ふふふっ…哲がそんな風だと、ゾクゾクするわ」

いやらしい笑みを浮かべているマリコ。
サディストだ…!!

「あんたがそこまで神経擦り減ったの、初めてじゃない?」

組んでいた足を組み替えるマリコを眺め、テツはまた机に突っ伏した。

「るせー…って…マジ、テツ疲れた…」

「ふふふ…哲ってば、そんなになってまで……男なんて、受け入れてコマにすればいいのよ」

…こえぇこと言ってんぞ。
マリコ、こういうこと真剣に言うから、マジ恐ろしいのな…(汗)

「テツはマリコじゃねぇ……あー…だりぃ…」

「あら、与えられた武器を使うのは当たり前じゃない?哲だってそうよ。やれば、出来る子でしょう?ふふふ…」




「出来ねぇよ、テツは……」

男にモテたことねぇし。
この性格だったら…当たり前か…

「顔上げなさい?哲」

「あ?だりーって。このままで良いって……」

「言うこと聞かない子、あたし嫌いよ?」

…やべぇ…声色がキレる寸前んときのになった。

急いで顔を上げる。

「ねぇえ?………メイクさせなさい?」

「あ?……あ?…………いや、無理…ぜってぇ皆、吐くから」

テツの顔面に…そのようなもの…ダメ、無理。
気持ち悪過ぎだろ……

「ねぇ…あんた、いい加減…メイクくらいして良い歳じゃない?」

は?テツまだ高二なんだけど!!

マリコみたいに、毎日毎日そんな綺麗に化粧とか出来っか!!
めんどくせぇ!!




「めんどくせぇことは嫌いだ。それと、皆に不快感は与えたくねぇ」

「…は?何言ってるか分からないわ…まぁ、メイクしてあげるから…動かないで」

「はぁ!?いいって!!マジいいって!!」

「炬哲ー茉莉子ちゃんにやって貰えよ〜(笑)」
「哲なら似合うでしょ(笑)」
「真知田、メイク上手いしな〜」
「茉莉子ちゃん、綺麗にしたげて〜(笑)」

何で皆笑ってんだよ…
面白がってんな…?クソ。
つか、榛いねぇな…

クラスを見渡してみる。

ふぅ…何か安心?

「あら、元が良い人にするメイクよ?驚かないでね?」

にっこり笑ったマリコは、未知の世界の入口…つまり、メイクポーチを開けた。

「や、や、やめろぉおおおおおっ!!!!(泣)」




「「「「「うぉおおお…///」」」」」
「「「「「はあぁぁぁ…!!!」」」」」

クラスの皆、ちょーガン見してくんだけど。
マジ…テツ、どんな顔してんだ!?

「やっぱり哲、あんた…可愛いわ…」

ほぅっと息を漏らし、にっこり笑い掛けてくるマリコ。

は!?テツが可愛い!?

「ほら、哲。鏡」

マリコが差し出してきた手鏡の中に映る自分は、何か違う気がした。

「これ、テツじゃねぇよ…誰だよコレ…」

「「「「「ぶっ……!!!」」」」」

「は?」

「「「「「ぶっきゃきゃきゃきゃっ!!お前、サイコー」」」」」
「ギャップ半端ねぇな!!」
「「「あはははははっ!!」」」
「「「「「炬哲ちょー可愛い!!」」」」」

は?は?
何で皆笑ってんだ…?