「ダメ」


「どうして?」


恥ずかしさに耐えながら顔を上げた時、携帯が鳴り出した。


着信音にピクリと反応した村上君が、ベッドの下に脱ぎ捨てていたコートのポケットからスマホを探し出す。


ディスプレイを見た瞬間に眉を寄せた彼は、ため息をつきながらスマホを耳に当てた。


村上君が電話に出たのと同時に、相手が大声で話を始めたみたいだけれど──。


「仕事が入ったから、今日は無理」


彼は特に気に留める素振りもなく涼しい表情で嘘をついて、強引に電話を切った。