『沙耶』


自分の名前を呼ばれただけで、こんなにもドキドキするなんて思わなかった。


「お……はよ」


平静を装う余裕もない私は、小さく返すだけで精一杯…。


なんとか身を捩って村上君の腕の中から抜け出そうとしても、彼にガッチリと固定されている昨夜の余韻を残した重い体は、まだ思うように動かすことが出来ない。


「ね、ねぇ、離してよ……」


頬が真っ赤になっているのを感じながら小さな声で懇願してみたけれど、村上君はそれを許してはくれなかった。