真っ直ぐ見つめる瞳に、佐山は笑った。



「そっか。 ごめんな」



「ううん。

心配してくれるのは嬉しいよ。

ありがとう」




「うん。

・・・でも俺、百合から離れないから」



「え、どういう______」



「俺、百合のこと好きだし」



「はい?」



「小野が飽きたら俺んとこ来い!」



「ひゃっ」




いきなり抱きしめられて、


心臓が跳ね上がった。




何何何何!?








今まで神妙な話してたよね!?


何さいきなり!



「ちょっと、佐山!」



「で、話の続き」



「え?」



「彼女退院して、今普通に生活してんの!」



「ええ?」




「俺らと同じ高校生!」



「えええ?」




「家近所で、今でも時々会ったりする」



「ぅえええ?」



「すっげー元気だよ!」





まぎらわしいいいいいい!!!



でも、彼女が元気でよかった。








「離れて~っ」


佐山を押し返し、どうにか腕の中から逃げだした。



もう!



何よ
何よ
何よ!!!




「百合ちゃーん」



「・・・もう佐山とは口きかない!!」



「ええ!?」



「絶交なんだからーーーー!!!」





この日から2日間、

あたしは佐山と口をききませんでした。



















佐山と知り合って1ヶ月がたった頃、

それはやってきた。















「百合、最近、佐山君と仲いいよね」



お昼休みいきなり

友達に言われ、


飲んでたジュースを噴出しそうになった。




「えっ、そうかな?」



動揺を悟られないよう、


落ち着きながら訊きかえす。




「だって昨日も百合んとこきたし。


ほら今だって」



振り返ると

教室の窓から手を振る佐山の姿が。



わわわわわわ



「ごめん!

ちょっと行って来る!」




教室を飛び出したあたしは


佐山の手を引き、屋上へ走った。










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「もう!

絶対変に思われた!」



「何が?」



「毎日佐山が来るから


友達が仲いいねって」




「ホントのことじゃん」



「そうなんだけどさ・・・・・・」




でも大樹が・・・


もし大樹の耳に入ったら、

どう思うだろう。



そんなあたしの心を読んだのか、




「あっちはあっちで好きにやってんだからさ、

百合も好きにやろうよ」




佐山は

気にすんな、と笑う。









「うーん」


悶々としていたとき、



ガチャッ



屋上の扉が開く音が聞こえた。



佐山と顔を見合わせ、

壁に並んで隠れた。



屋上は立ち入り禁止で、

入ってくるのは管理作業員くらいだと思った。



でも、



「華岡さん、いるー?」



という声が聞こえた。




その声に聞き覚えはなく、

声の主を壁の影から覗いてみると、


「・・・あ」


見覚えのある姿だった。









「誰・・・?」


頭上から聞こえる佐山の声。




「大樹の友達。

名前は・・・瀬戸君だったと思う」



「なんだそれ」



「だって、あんまり関わりないんだもん!」




あたしは瀬戸君に向かって手を振る。


瀬戸君はあたしに気づき、

ダッシュで死角の場所まで走ってきた。




「はぁっ、何してんのこんなとこで・・・」



一息ついて

顔を上げた瀬戸君は佐山に気づき、


・・・何故かガンを飛ばした。



見上げると、佐山も睨んでいた。



え、何、知り合い?








「ど、どうしたの?」



「大樹が探してた。

百合ちゃんに用があんだって」



「わかった。

わざわざ探してくれてたんだ。


ありがとう」



ううん、と笑い

瀬戸君は再び佐山を凝視する。



ん?と不信に思う。

どうして、何も話さないんだろう?


知り合いじゃなかったのか?




「大樹、教室にいるからさ」



その言葉に、

あたしは佐山に手を振り、

走り出した。




大樹があたしを探してるなんて珍しい。


今日はお弁当の約束もしてないのに。