全く興味のない本のタイトルに目を滑らせている時、突然の手が絡まる感覚にピクリと体が跳ねた。
「っ、なに」
「やっぱ、先輩の側が落ちつきます」
意を決して首を左に向ければ視線を宙に投げている朔。
ついでに何か、耳がついたパーカーを着ている。いつかの猫耳だろうか。被っていて似合うなんてどういうことだろうか。
いや、そんな事はどうでもいいよね。うん。
「前と比べ物にならないくらい素直になったよね」
「好きになってもいいんだって思えば思うほど素直になるみたいです。俺」
「何それ」
思わず苦笑しながら、床に視線を落とす。
どんどんと色んな部分が見えてくる。見えなかった部分が見えてくる。