「私ね、ずっとこの日を待ってたの」

唐突に、彼女は言った。



「だって、あなたってば
 中々、告白してきてくれないんだもの」

「え、それって……」

訊ねると、彼女はふふ、と笑う。




「私、嘘を吐いていたのよ。

 本当はね、あなたの事を知っていたの。
 ずっと、ずっと前からよ。

 丘向こうの学校に通っているのよね、
 それで、クラスは2年5組。
 今の席順は丁度真ん中。
 家族構成はご両親にお姉さんとお兄さん
 赤い屋根の大きなお家に住んでて……
 可愛い家よね。お花もたくさん。
 お母さんのご趣味なんでしょ?

 それで休みの日には起きるのが遅いの。
 この間なんて、もう
 お昼ご飯も片付けられちゃって。
 ちょっとだらしないところも、
 母性本能をくすぐられる感じで素敵よ!

 駅に行くといつも私を探してくれて、
 でも目が合わないように、
 物陰に隠れちゃって、本当、可愛い。

 本当はね、私の方が、
 ずっと、ずーっと、あなたを見てたのよ。

 でもあなた、
 全然気がつかないんだもの。
 私、ずっと待ってたのに」



言っちゃった。
ちょっと恥ずかしいわね。と、
彼女は照れくさそうに微笑んだ。


君を愛してるんだけど、
ごめん、ちょっと……怖い。


そして『これからよろしくね』と、
彼女はとても美しく、微笑んだ。