車はビル街を通り抜けながら、進んでいく


私はラジオから流れる洋楽を聞くのが好きなので、今日もラジオに手を伸ばした


けれど、その手は龍貴の手によって止められた



「…な、何?」


「いや…。今日はさ、音楽つけんの止めてくんね?」



龍貴はまっすぐ前をみたまま、ぽつりと言った


…なんだろ…


やっぱりいつもと違う気がする



「何よ。なんかあったわけ?」


こういう雰囲気はあまり好きじゃない


私は思い切って龍貴に尋ねた



「…いや、別に」


「じゃ何よ。なんでテンション低いの?」



私の質問に龍貴は被っていたキャップをグッと下に向けた


「…たいしたことじゃねぇんだよ」



龍貴はちょっとふて腐れたようにつぶやいた



「はいはい…。じゃCANONで話聞くよ」



私は馴染みのあるカフェへと、車を走らせた