キザミちゃんが5才の時のこと。幼馴染の私は、いつもキザミちゃんの家に遊びに行っていた。どうして、『キザミちゃんと遊んでいた』と言わないかというと、いつもキザミちゃんは時計をいじっていて、私に見向きもしなかったからだ。正直退屈だった。話しかけても、たまに『うん』とか『ああ』とか返ってくるだけだったし。キザミちゃんの家にいったら、キザミちゃんのお母さんが出してくれる時計草のハーブティーをのんで、ぼーっとしてるのが常だった。本当に退屈だったけど、この辺りにはキザミちゃんの他に同じ年頃の女の子はいないし、ちょっとした楽しみもあったので私はキザミちゃんの家に通い続けた。ちょっとした楽しみというのは…ほら、今刑事さんが来てるみたいに、警察の人が不思議な事件をキザミちゃんに話しに来ることだ。『神社のガラスの樹』事件の時もそうだった。
 キザミちゃんがいつものようにHITACHI製の目覚まし時計を分解していると、キザミちゃんのおじさんにあたる警察の人がたずねてきた。おじさんも時計草のハーブティーをのみながら、『この家は本当に時計づくしだなぁ』とかつぶやきながら、ガラスの樹のことを話し出した。