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ナズちゃん達がお化け屋敷に入ってから、5分が経っていた。
ユウキを心配しつつ、モモカちゃんと話していると、係員が、
「どうぞ」
と言って、お化け屋敷の扉を開けた。
「入ろうか」
「うん」
俺達は、お化け屋敷に入った。
中は、意外と精巧に造られていた。
落ち武者とか座敷わらしとか結構リアルだ。
「こ……怖いよ」
モモカちゃんが怖がって、俺の腕を握ってきた。
「大丈夫だよ」
そんなやり取りをしていると今度は、後ろから幽霊の格好をした人が、追い掛けてきた……明らかに係員だったけど。
俺達がお化けから逃げていると、前からも何かが走ってきた。
板挟みかよ?
「きゃあぁああ」
モモカちゃんが叫んだ。
すると、前から来たお化け(?)らしき人が、
「うわぁあああ」
と、叫んだ。
……ん?
聞き覚えある声?
この声……
「ユウキ? 」
俺は、前から来た人を凝視した。
「えっ?
あら、本当。
まったく……脅かさないでよ! 」
モモカちゃんが、怒り気味に言う。
「悪ぃ……」
「ってかユウキ、お前なんでここにいるんだよ?
ナズちゃんは? 」
「えっと……」
ユウキが、言葉を濁らせる。
「どうしたんだよ?」
「じ……実は、怖くて逃げ出して来た……」
「はぁ?
ナズちゃんは、どうした? 」
「必死で……おいてきちゃった! テヘ」
「テヘ……じゃね~よ!
お前、それでも男か?
女の子一人おいてくる奴がいるか! 」
俺は、無意識のうちに怒鳴っていた。
「だって、きっとナズナちゃんなら一人でも大丈……」
俺は、ユウキの話し途中に、駆け出していた。
嫌な予感がしたんだ……。