王子に抱き着いたままのモモカに、後ろにいたあたしは、口パクで訴えた。
(こいつとは、初対面だし無理だって!)
それを見たモモカは、ウインクをする。
(協力してくれるって言ったでしょ!よろしくね♪)
あたしの思いは、モモカには届かなかった。
仕方ない。諦めて弱虫と行くしかない。
「おい!行くぞ」
と言って、泣きそうなユウキをひっぱって、あたしは先にお化け屋敷に入った。
「えぇっ?」
「さっき行くって言ったろ!」
「言ったけど心の準備が……」
うざっ!
「えぇい!
女々しい! サクッと行ってサクッと帰ってくんぞ!」
あたしは、容赦がなかった。
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「……ナズちゃんすごっ!」
ハルトが、驚いている。
「アハハ……ナズナは男前だからね♪」
「うわぁああ!」
中から、ユウキと思われる雄叫びが聞こえた。
「大丈夫か?
ユウキ」
ハルトは、少し心配そうにお化け屋敷を見つめた。