「えぇ~? だってナズナなら、こんなプリント5分で終わるじゃん! 」
トモカが、笑顔で有無を言わせない迫力を醸し出している。
しかし、あたしも引き下がる訳にはいかない。
「い・や・だ!」
断固として拒否をした。
「いいよぉ~やってくれないなら、この前頼まれてたもの、買ってきてあげないから!
あれ、あそこしか売ってない限定品なのになぁ」
トモカが、いやらしげな顔をしている。
アレを出してくるなんて、鬼! この、ドS!
「ちょっ! それとこれとは話しが違……」
「あれってなに?」
カリンが、トモカに聞く。
「高塚屋の一日限定100個のシュークリームよ」
「あれ、めっちゃ美味いんだ! 一回食べたら病み付きになるぜ!」
「あのシュークリーム、東京の高塚屋本店でしか売ってないの。
それで私、今度、東京に行くから、ナズナに頼まれてたんだけど、残念……ナズナいらないのね」
トモカが、残念そうな演技をした。もちろん嘘だ。
「ちょっ……! まてよ」
あたしは焦った。だってシュークリームがかかっている。
「カリンには、買ってきてあげるわね」
トモカが、満面の笑みを見せた。
「わ~った!
やる……やらせていただきます! そのプリント!」
あたしは、シュークリームの誘惑に負けた。
「あら? ほんとに? いいの?」
白々しい……。
「貸せ!」
もうやけくそだ。
3分後。
猛スピードで、問題を解いたあたしは、プリントを終わらせた。
「ほれ」
トモカにプリントを差し出す。
隣で、ただ喋っていたトモカとカリンは、目を見開いた。
「えっ? 嘘? もう終わったの?」
「さっすが! ナズナ! ありがと!」
プリントが終わると、あたしは、また机に突っ伏した。
その後の昼休み、あたしは、ずっと寝ていた。
トモカは、プリントを受け取った後、カリンやユウナと雑談して自分のクラスに帰って行ったらしい。