どうして連れていってくれなかったの?なんて煉に聞こえれば、


間違えなく
怒られていただろう。


―――『馬鹿なこと言うな。』ってね。


――――――




「花ちゃん。煉の顔、見てやって。」

「煉の…お母さん…?
…あたしにはそんな資格ありません…。」


煉のお母さんは
ひたすら涙を流すあたしを優しく抱き締めてくれた。

―――煉の匂い…



「いい?花ちゃん。
煉が死んだのはあなたのせいじゃない。」


煉はあたしが殺した
あたしが飛び出したりしたから―


「あたしが…あたしが悪いんです!!あたしが馬鹿なことしなければ、煉は助かったのに…。苦しいです…。煉…なんであたしを連れていってくれなかったの…?煉の変わりに、あたしが―「馬鹿なこと言わないで!…花ちゃん、煉の分まで生きて…」


あたしは今、最低なことを口に出そうとした。


あたしの前から立ち去ろうとした煉のお母さんの背中は


震えていた。


「(辛いのはあたしだけじゃないのに…。)」