すると女は、返事をして手の平サイズの機械を出した。
「こちらに手を当てて、必要事項をインプットしていただけますか?」
「これ?…はい、インプット。」
「………。」
「………。」
「あの…インプットを…。」
「先輩、目を閉じて手に集中してください。」
「は?」
意味はわからないが、ここでは良太のいいなりになるお利口さんの俺。
目を閉じて、意識を手に集中する。
すると、頭の中に文字が浮かんできた。
名前、年齢、性別…基本的な、俺の情報にひとつひとつ答えていく。
そして、最後に…
『あなたのなりたいモノは、何ですか?』
え?
なにこれ?
アンケートでも始まったのかと思い、慌てて目を開ける。
「おい、良太!なりたいものってなんだ?」
「…え?先輩なに言ってるんですか?」
「おいおい、和彦。好きな職業が体験できるのが、これの売りだって良太から聞いたろ?」
いつの間にか、登録を終えたっぽい卓にまで、突っ込まれてるし。
飯も早ぇけど、こういうのも得意だったのか?
「職業って…なに?働くのこれ?」
「そういうんじゃねぇよ。いや、そうだけど…。」
「お…いや、どっちだよ!」
思わず、前のめりになり突っ込む俺って、笑いのセンスあるんじゃないか?