しばらく、あっけにとられていると、いつの間にか良太が、人を連れてきた。


「この人が、経営者の人のところに連れていってくれるみたいですよ。」

「マジか。」


ついていくと、従業員通路を通って、待合室みたいなところに着いた。

ここで待つように言い残して、その人は部屋を出て行った。


「なんか本格的だな。面接とかあんのか?」

「普通ありますよ。変な経営してたら、すぐライバルに潰されますから。」

「こわっ。」


そんな会話をしていると、清潔感のあるサラリーマン風の男が入ってきた。

男は、お辞儀をして名刺を差し出した。

名刺には、『人事部部長補佐 須藤祐二(すどうゆうじ)』と書かれていた。

経営者じゃねぇじゃん。


「それでは、就職希望という事でいいんですよね?」

「あぁ、パイロットになる。」

「はい。えー、ではですねぇ。にさん質問させてもらいますね。」

「はいよ。」

「そうですね。えーっと、何か乗り物の免許は持ってますか?」

「ななはんの免許ならあるぞ。」

「先輩、それ中型免許ですよ。」

「知らねぇよ。」


苦笑いを、浮かべながら次の質問をしてきた。


「えー、『to be』を始めたのは、いつ頃になりますか?」

「今日。」

「ふむ、なるほど。えー、それでは、まだ『to be』については、詳しくないですか?」

「全然わかんないな。」

「そっか…。そーしたらぁ…。まぁいいか、じゃあ一番簡単な、セスナの操縦をお願いしようかな。」


簡単すぎる質問を、少ししただけで採用か…いい加減な経営って、この事じゃないのか?

雇われるだけとはいえ、不安だ。