一言文句を言おうと、口を開いたところで、後ろから声が聞こえた。
「すぐるー。なになに?これやんの?珍しいね。あたしも興味あったんだぁ。」
一気にどんだけしゃべんだこいつ。
振り返ると、卓の彼女らしき女が、手を振りながら、こっちに向かってきた。
卓は、彼女に手を振ってたのね。
その彼女は、背中くらいまでのロングの髪に、吊り目気味の大きな目。
すらっとした細身で、女にしては長身なほうか?
薄めの化粧が、好印象を与えていた。
想像以上の可愛さに、軽い嫉妬が沸いてきた。
「おぉ、みどり。早かったな。そこで登録するんだとよ。」
「はーい。あ、そこのカウンターね。おっけぇ、ちょっと待ってて。」
俺の脇をすり抜けて、さっさと案内所に行ってしまった。
挨拶とかねぇの?ねぇ、挨拶…お友達になりたいよ?ねぇ?
「そういえば、紹介してなかったな。あいつが俺の彼女。みどり。よろしくな。」
「あぁ。」
「よろしくお願いします。」
あの…、本人いませんけど。
誰に向かって、よろしくなんですか?
「お待たせー。」
はやっ!!
卓の紹介とも呼べないものが、終わったと同時に戻ってきた。
「おー、早かったな。そうだ、紹介するよ。ダチの土屋和彦と、後輩の高橋良太だ。」
「あ、どうも始めまして。卓の彼女の、吉井みどりです。」
「高橋です。よろしくお願いします。」
「あ、土屋和彦です。よろしく。」
「よろしくね。で?あたし、シンガーソングライターにしたんだけど、なにしたらいいの?」
え?歌手?
さすが卓の女だな。
ぜってぇ、飯食えねぇぞ?