「…。このパーカーどうしよう…。」

先生から借りたパーカー。
返さないと…。
でもうちの涙でちょー濡れてる…。
洗って返したほうがいいかな?
鼻水…ついてるかわかんないけど…。
とりあえず洗って返そう!

「…。見学…1年生は6時まで何だった…。」

時計を見ると針はもうとっくに6時半を回っていた。

「教室にかばんあるんだった…。」

わたしは立ち上がって教室を出た。
窓の外を見るとあたりはもう暗かった。
でもその暗さが今の私にはちょうど良かった。
ひとみとのことがまだ針のように胸に引っ掛かっていて…。
とても明るい気分にはなれなかったし…。
外の暗さは私の心の暗さと同じような気がして心地よかった。

教室に戻ると私のバックがあった。
そしてもう一つ…。
誰にかばんかは分からないけど。

「こんなに遅くまで残ってる人いるんだ…。」

どうでもいいか…。
早く帰ろう。


・・・・・

「おいまてよ…」

聞きなれた声に呼び止められたのは教室を出てすぐだった。
後ろから呼ばれたけど誰なのかすぐに分かった。

嫌な声。
私の大っきらいな声。
最低な奴。

私はまたすぐに歩き出した。

ぐぃっっっ

「まてっって…」

けれど今度は腕を掴まれてひきとめられた。

顔を見たくない。
何も話したくない。
なにも聴きたくない。

「やめて…」

声になったかは分からない。
でも私の心の叫びだった。

こいつといるとろくなことにならない。
こいつといるとよくないことばかり起きてしまう。

見学の邪魔はされるし…
ひとみとけんかするし…
嘘つき扱い…されるし…