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部屋に入り、立ちすくむ。
鈴のあの顔が頭から離れない。
「・・・っくそ・・。こんなことしてる暇は無いのに・・。」
独りでに呟く。
あの、“助けて”と求めてくる瞳とは対照的に言葉は冷たく突き刺さる氷柱のよう。
「こんな気持ちで決戦なんて・・・」
こんな気持ちで行ったら、死ぬだけだ。
そんなことは十も承知だ。
グッと拳を握る。
「・・・夢羽。鈴・・。」
大切だから、簡単には行かなくて。
壊れそうな君たちを、
曖昧に触れるしかなかった。
「・・・王妃様・・。」
俺の愛しい人___
恨んでは、愛して。
自分の幼さを恨んで。
純粋に好きだった。
あの優しさも陽だまりのような笑顔も。
全部、愛してた。