『・・・知ってたんだ』

「まぁね」

『じゃぁ、このこと高村って・・・』

「知らないよ。
あんたが自分の事を好いてくれてるなんて微塵も思ってないね」

『あ、そうなんだ・・』


南の言い方がキツかったのか、それとも高村に少しだけ俺の気持ちが届いてると僅かな期待があったせいか、知らないと聞かされて残念という思いが胸をかすめた。

少し傷心のまま黙っているとまたもや南が話始めた。 


「で?何なの?」

『は?何が?』

「好きになった理由」

『理由・・・―
高村の純粋さっていうか笑顔っていうか・・』

「何それ?」

『1年の秋頃に、高村が友達と中庭で話してるのを聞いたんだ。もちろん南もいたぜ?』

「どんな話聞いたの?」

『どんなって・・難しいなぁ。
まぁ、恋愛関係の話をしてて、俺が覚えてるのは高村の言葉だけなんだよ。

“男でも女でも、人の気持ちを弄ぶ人は嫌だなぁ。
遊び半分で付き合うとかダメだよ。
それに、飽きるっていうのが分からない。好きなのに何で飽きるかなぁ?
本当に好きなら飽きないよ”
って言ってて、その言葉がすげぇ心に響いてさ』

「へぇ。そんな話聞いてたんだ。全然覚えてない」

『他にも色々喋ってたけどうる覚えでさ。
でもそれ聞いた時・・何か泣きそうになった。
あ、男のくせにとかってバカにすんだろ!?』

「誰かの言葉が心に響いて泣きそうになったことをバカにしねぇよ。
そこまで最低な人間じゃねぇ。
でも、泣きそうになるって・・幸の言った言葉に共感出来るほどの心の傷をあんたも持ってんの?」



・・傷・・。


あれ?今、あんたもって・・南も何か傷があるのか? 


『南も、恋で傷付いたことあんのか?今、あんたもって言ったから』

「私が言ったのは幸だよ。幸も傷があるから、あんな言葉が出るんじゃない?
その言葉に共感出来るってのがそうでしょ」










高村にも傷・・・?