行きしは背中に菜々の体温があったのに、一人ぼっちの帰りは背中がやけに冷たくて、帰り道が長く感じた。 ―『バレンタインは男から告ってもえぇんやろ?』 …え? すれ違った男子高生の言葉にチャリンコを止め、振り返った。 ―『おー。お前告るんけ?』 ―『まぁな』 ―『ははっ。頑張…、』 その後の言葉はもう、聞き取れなかった。 男からもえぇ…? せやったら、俺も……。 さっきの男子高生みたいに…。