「幸せ?」

剣斗が
聞き返すと

並んで立っている
剣斗と俺に
微笑みかけてから

海の向こうの方を
見つめなおし
こう続けた。


『お母さんが
最期に 言い残した
言葉。

《幸せになって》って。

私ね?

病気だ。って
気づいて
嫌な思いして
《幸せ》
って 何?
って 泣いたことも
あった。

幸せって
人それぞれ、感じ方は
違うと思いけど

普通の幸せって
すごく 身近に
あると 思う。


こうやって
三人でいれたり
佑と
いたり、
咲と話したり…

こうゆうのが
幸せなのかなって
思うんだ。


病気になって
気づいた事だと
思う。

嫌なこと
だけじゃないね。

病気も。』


そう言った
柚夏の瞳は
澄んでいて
迫力があった。



柚夏は
俺より はるか
偉大な存在。

17歳の
高校生に
気づかされる
大切な事。


もし
俺が 柚夏と
同じ立場に
立ったなら
そんな 考え方、
出来るの だろうか。

不意に そう思った。