「さぁーっ!
イルカのニーナちゃんが飛びます!皆さん一緒に数えてください!
3!2!1!!」
わーーーっと歓声が飛び交った。
私も身を乗り出してはしゃいだ。
水族館なんて久しぶり。
隣には秀くんだし。
水槽を覗き込む秀くんが、照明で水色に揺らめいた。
私が「あっこの子かわいい」と言うと、
「本当だ」とわざわざ私と同じ目線の高さを合わせて、腰をかがめてくれた。
水族館か。
秀くんは、前の彼女とも来たことあるのかな?
手をつないで?
笑い合いながら?
「歩?」
「…へ?あ、ごめん!何?」
「どうかした?」
「ううん!何も?」
「そっか。足元暗いから気をつけろよ?」
「うん、気をつける」
危ない危ない、どっか行ってたよ私。
もう、昔の彼女のことなんて、考えるもんじゃないよ。
やめよう。
せっかくのデートなのに台無しだ。