理由を聞いても『酔い覚まし』とか『風に当たりたい』とか曖昧で。

じゃあひとりで行ったら、とも思いながらエレベーターに乗り込んだ。

夜の風はまだ肌寒く、冷たい空気に街の灯がはっきりと映る。

雑風景かと思っていた屋上は、意外とごちゃごちゃとしていた。

フェンス近くのベンチに二人で並んで腰を下ろした。

「何でこんな所にベンチ?!って思ってるだろ。」

「はい、もちろん。」

「ははっ、俺も知らない。」

両腕を空に伸ばし、うーんと身体を伸ばす。

「酔いは覚めました??」

「うーん、少しはね。」

彼から視線をずらし、夜の街の灯を見つめた。