「さぁ行くよ。」
現実逃避をしていた私は、その一言で現実にもどされる。
隣りいる瀬戸さんがセレブな人に見えて…お店を出てからも、言葉が出ない。
だってその手には、小さなあのお店の袋があったから。
「メシでも行く??」
そう言いながら、空いていた手が、私の手を握った。
焦ってそれを解こうとしたが、それは無理なようだ。
見上げると、口許が緩んでいる。
一言、言おうと思ったがきっとまた同じセリフが帰ってくるだろう。
別にいいだろ、と。
こんな、人がたくさんいる所で誰に会うか分からないと私はヒヤヒヤものなのに。
「浩輔!!」
瀬戸さんを呼ぶ声がした。