そうだ

彼が向けたあの眼は
ただ事でなかった

「でもな、藤宮」

さっきまでまた
ただの男の顔を出してしまったことに気付いて
できるだけ、教師らしく
注意するようにいう

「男はみんな狼なんだよ。藤宮ももう高校生なわけだし…あんまり男の人の部屋に出入りするとなあ…」

「男の先生が言いますかあ?」

彼女はカラカラと笑う
「残念ですけど、梶さんには素敵な彼女さんがいらっしゃいます。ありえませんよ」

彼女は心の中で恥ずかしくなった

自分を“素敵”といってしまったからだ