「俺の髪、そんなヤバいですかね?」

そう尋ねると、掴まれっぱなしの髪を
軽く引かれたのでそれに従い、顔を彼の方へと向けた。

彼は、何かを考え込んでいるようだ。

「……そんなでも無いですよ」

そんなに良くないのか、悪くないのか
どっちの意味なんでしょうか?

考えていると、今度は頭頂部を押されて、
彼の胸に顔を押し付ける形になった。
そしてそのまま、頭を抱きしめられる。



「島津さん?」

「……貴方が俺を触り放題なら、
 俺も触り放題してもいいんですよね?」

「……いいんじゃないですかね?」

疑問形だけど了承すると、
片手は頭を抱えたままで、
もう片方が背中へと降りてきた。

その手はそのままシャツの下へ……って

「島津さん、それは駄目です!」


そうは言うけれど、別に
彼を傷つけたくて言ってるんじゃない。
だからそんな表情をしないでください!


「だって、アンナが見てる!」

そう叫ぶように言うと、
彼も部屋のすみを見た。


「……そうですね」


彼女はいつこの部屋を出られるのかと
俺たちのじゃれあいを少し恨めしそうに、
それでも忠犬のポーズで待っていた。


鋭い嗅覚にこの部屋はキツイよね……。

とりあえずみんな揃って部屋を出た。


そしてそのまま明日の約束をして
俺は自宅へと帰ろうとした。
昼前には出かけないといけないし。



……聞こえた舌打ちは気のせいだと思おう