【10.俺と彼女と彼と彼とって多い!】
「おはよう、アンナ
今日はちゃんと寝坊せずに来たよ!」
いつも通り挨拶をすると、
彼女もいつも通りに歓迎してくれる。
「今日は曇りだけれど、
そんな日でも君の存在は
俺の心に温かい光を差してくれるね!」
「……クゥーン」
「どうしたんだい?
何だか寂しそうだね……」
だけどしっぽはすぐに止まってしまい、
俺に向かって何かを訴えかけるように
じっとこちらを見つめている。
「君がそんな顔をしていると、
俺まで悲しくなってしまうよ……
一体どうしたというんだ?!」
嘆いていると、近くの窓から
ひょこっとお兄さんが顔をだした。
「ここ数日アイツと一緒に寝れなかったし
今日もまだ寝てるから、
寂しいんだよねー?」
島津さんはお兄さんにも
アイツと呼ばれてるのか。
そして島津さん、起きるの遅いなー。
「お兄さんおはようございます。
今日はお仕事お休みなんですか?」
この人と会う事は、あまりない。
彼は美容師をしていて、俺が遊びに
お邪魔する事が多い土日は仕事だからだ。
「そう、うち火曜定休だからね。
広人君は学校いいの?」
「俺、今日は午後からなんです。
だから今日は
いつもよりゆっくりと
愛を深める事が出来るよ、アンナ!」
今日も抱きついても蹴る人がいない!
……でも、やっぱりアンナは少し悲しげだ