【8.俺の知らない昔の君】
「こんにちは、アンナ。
ごめんね、深夜番組が面白くて
今日は寝坊してしまったんだ。
……待っていてくれたの?
そうなんだね?!」
いつもよりも少し激しい歓迎は、
きっと待ちかねていたからなんだ!
前足を上げて、
万歳をするように飛びついてくる彼女を
両腕で受け止めると、
いつもとは違う匂いに気が付いた。
「いつもと違うけど、いい匂いだよ!
もしかして、シャンプー変えた?」
「違うよ。
さっきまでアイツと一緒に寝てたから」
窓から島津さんのお姉さんが顔を出した。
彼女が‘アイツ’と言うのは、
島津さんの事だ。
と、言う事は、島津さんはアンナと
一緒に寝ていたというのか……羨ましい!
まあ、ご主人様だからね!
そんな事もあるさ!普通だよ!
だけどさあ!
「と、言う事はなんですか、
あの人はいい匂いがするんですか?!
その匂いをアンナに移したと!?」
同じ匂いをさせるなんて!
羨ましすぎる!
「……落ち着きなよ。
あと直で嗅ぐとすごい香水臭いよ、
よくあんなベッドで寝れるね、アンナ」
お姉さんが関心している。
確かに、そんなにキツイのなら、
嗅覚の鋭いアンナには辛いだろうに……
「君はご主人様思いの
優しい子なんだね!知ってたけど!
そんな君を愛しているよ!!」
そうしてもう1度、抱きしめなおした。
島津さんが居ないから、蹴られない!
「本当に、アンナが大好きなんだね」
「はい!大好きです!」
「そういやいっつも外で遊んでるけど、
子犬の頃の写真とか見た事ある?」
「何枚かは見せて貰いましたよ」
「そっかー。アルバムいっぱいあるんだよ
中入って、見るかい?」
「はい!」
何故かによによしているお姉さんが、
俺とアンナを室内へと招き入れた。