“指輪”をしているというのは、そういうことだと、心の中ではわかっていたけれど。 それでも私は、溺れ続ける。 「理恵と会ったのは、5年前のことなんだ。」 …フッ、と。 小さく息をつきながら、先生は頬杖をつきながら話し始めた。 もうそろそろ、春が来る。 訪れるのは、生暖かい南風。 『……。』 5年も、前に。 5年間も、先生と知り合っていた人なんだ。 その年数は、大きくて。やっぱり私は勝てないのだと実感する。