「美優ー?」
今日も佑くんは、いつもと変わらず黙って爽くんの隣で本を読んでいて。
たまに、爽くんに話を振られて静かに笑う。
いつもはかけてないのに、本を読む時だけかける黒縁のメガネとか。
一つ、一つが。佑くんの全てが、私の心を刺激するんです。
佑くんを見るだけで、言葉にできない感情が心の奥から込み上げてくるの。
「…美優?み・ゆ・う!」
コツン、と。
麻美におでこを指先で叩かれたのと、梨花の大きな声で我に返る。
目の前に足を組んで座る梨花は、あからさまに機嫌悪そうに口を尖らせていて。
そんな表情を見た途端、やってしまったと思った。