「愛花達が居ないから甘えモード全開だな」
「だって、不安なんだもん」
丈瑠が離れていきそうで…
そんなあたしのことを見透かしたのか…
「健斗や愛花が居るし俺は瑠夏から離れない」
あたしの頭を撫でてくれるスピードも昔から変わっていない
「それに…独占欲強いから瑠夏以外考えてねぇよ」
「恥ずかしいからそれ以上言わないで」
「だって、瑠夏は未だに告白されてるんだろ?最近、また可愛くなったし綺麗さも増してるし」
……えっ?
「何で知ってるの?」
「捺稀から聞いた」
「全部断ったよ?丈瑠しか見てないし。カッコイイって思うのも丈瑠だけだよ」
「俺だって妬くんだよ。瑠夏と離れたくねぇ」
あたしが不安になるように丈瑠も不安になるんだね
「さっきよりも強くギュッてして?」
丈瑠はあたしのお願いを聞いてくれて抱きしめてくれた
響の時には感じなかった温かい温もり
「可愛すぎるんだよ」
「あたし、可愛くないもん…」
周りは皆、可愛いから丈瑠と居て良いのか不安になるの
「瑠夏は可愛いよ?健斗達が産まれてから尚更ね。」
丈瑠に“可愛い”って言ってもらえるだけで未だに嬉しいや
「健斗や愛花が居て我慢してた。本当はずっと甘えたかった」
「言ってくれれば良かったのに。」
「だって、丈瑠も忙しいでしょ?だからあたしの我が儘になんて…」
付き合ってられないよね?
「瑠夏は無理しすぎだ。涙流しながら寝てるの放っておけねぇよ」
ダメだ…。丈瑠の前だと安心しちゃって涙腺弱くなる
「小さく包まって泣いてるから抱きしめたくて仕方ない」
丈瑠…気づいてたんだ。
あたしが泣いてること。
起きたら涙が流れてるんだけどね
変な夢を見たわけでもないのに。
「本当は気分転換したいと思っても愛花達が居るって思ったら頼れなくて…」
あたしが泣いたり甘えたりしたらダメだよね
これでも母親なんだからあたしがしっかりしなきゃ
「瑠夏…?無理してない?」
……えっ?
「確かに俺達は2人の子供の親だけど…たまには我が儘言っても良いよ。俺も瑠夏に頼りっぱなしだから疲れてるだろ?」
「あたしの方が丈瑠に頼りっぱなしで何もしてあげれてないよ。」
「俺、バイトで忙しくて健斗達の相手も瑠夏の相手も出来てないしな」
丈瑠は優しすぎるんだ
「2人とも居ないし散歩がてら買い物にでも行くか?」
「うん!!良いの?」
「もちろん。久しぶりに2人で出掛けよう。だいぶ体調も戻ってるみたいだし」
丈瑠が看病してくれたおかけでだいぶ楽になって来ている
「準備してな?」
あたしは丈瑠に言われ急いで準備する
軽く化粧をし花柄の真っ白いワンピースにヒールの高くないサンダルを履く
「瑠夏、行くぞ?」
丈瑠はあたしの手を握ってくれた
嬉しくなってあたしもその手を強く握り返す
2人で出掛けるのとか本当、久しぶり
2人が居るとなかなか出掛けること出来ないんだよね
「ねぇ、2人の洋服見に行っても良い?」
「あぁ、良いよ。瑠夏も好きなのあったら自分の洋服買いな」
ワンピース欲しかったから買おうかな
ショッピングモールに行き健斗と愛花の洋服を買って自分の気に入った洋服も見つけた
丈瑠にもなにかしたいんだけどな…
「丈瑠ー?何か欲しいものないの?」
「俺?瑠夏が隣に居てくれればそれで良い」
立ち止まり握ってる手と逆の手であたしの頭を撫でながら優しく微笑む
「瑠夏と子供達2人が居てくれれば良いよ。今はその他に何もいらない」
そういった丈瑠は何処かカッコイイ
「るーかっ!!」
誰かに自分の名前を呼ばれて振り返る
そこにいたのは響と美貴だった
「丈瑠達も2人でデートか?」
そう、大学生になってから響と美貴が付き合い始めたんだ
最初は気まずかったけど丈瑠もあたしも受け入れた
報告してくれた時、2人ともとても幸せそうだったから
「健斗君と愛花ちゃんは?」
周りを見渡しながら美貴が聞く
「瑠夏が体調崩して母さんに預かってもらってるんだ」
「久しぶりに会いたかったな」
「今度遊びにおいでよ。家狭いけど…」
「うん。行く!!」
美貴とはあれから仲良くなって話すようになった
響と付き合い始めたって聞いた時はびっくりしたけど幸せそうな2人を見てるとこっちまで嬉しくなった
「じゃあ、俺ら行くから」
丈瑠はあたしの手を握り足を進める
「丈瑠?何処行くの?」
何も言わずに進んでいく
不安になるじゃん
着いた先は……
「此処は?」
「瑠夏が行きたがってたとこ」
丈瑠はニコッと笑って説明する
あたしが行きたがってたとこ
それは……美容室
ずっと同じ髪型で飽きてきて染めたいと思ったんだ
あたしが今でもバイトしているカフェとその隣の優希さんが経営してた美容室は優真さんがカフェと同時に経営してて…
優希さんは最近、別の場所で新しく経営を開始した
“いつかおいでね”って言われてても健斗達の世話をしてるとなかなか行く暇がなくて多少落ち込んでたんだ
「“髪の毛染めたい”って前から言ってたの覚えててくれたの?」
「当たり前。健斗達が居ないから今のうちに行って来い。俺は近くで時間潰しとくから」
と言って財布の中から五千円札を取り出してあたしに渡した
「えっ…?良いよ。このくらい自分で出すから」
申し訳なくなって丈瑠にそのお金を返した
丈瑠が必死に貯めたお金をあたしのために使うのは申し訳ない
「たまには甘えとけ。今回バイト代がいつもより多かったからご褒美だ。足りない分は自分で出せよ」
「ありがと。やっぱり丈瑠は優しいね」
自分のことで精一杯のはずなのに…
「瑠夏も少しは自分の好きなことに使っても良いんじゃないか?」
“2人にお金がかかるのは分かるけど…”
とあたしの頭を撫でながら呟いた
「愛花達の分はどうにかやりくり出来てるよ。ただ食費とかに消えてるだけ」
実は、おばあちゃんの家に行った時、必ず“ひ孫達に何かして”とお金をくれるの
最初は断ったんだけどおじいちゃんもおばあちゃんもあたしに子供が出来たのが相当嬉しかったらしく断ってもくれるんだ
ちゃんと少しずつ貯金してるけどね
学費はお父さん達が出してくれてるしアパートの家賃はいつの間にか光莉さん達が出してくれてる
「さっ、行っておいで?待ってるから」
丈瑠に見送られ美容室に入る
「優希さん!!」
「あっ、瑠夏ちゃん。待ってたよ」
“待ってたよ”なんていうことは丈瑠が連絡してたな
「はい。座ってね」
優希さんはあたしの髪の毛を手際よく染めていく
「はい。終わり」
結構、長かったけど優希さんと世間話をしながらだったからあっという間だった
「ありがとうございました!!」
少し梳いて貰ったから軽くなった
「瑠夏?終わったか?」
ちょうど良いタイミングで丈瑠が入って来た
「丈瑠君、こんな感じで良かったかな?」
「はい。良く染まってますね」
「瑠夏ちゃんはなんでも似合うからね。丈瑠君も順調かい?」
勉強のことを言ってるんだ