「でしょうね。ちゃんと病院に連れて行きなさいよ」
「分かってる。愛花、健斗。ちゃんと言うこと聞くんだぞ?じゃあ。よろしく」
「丈瑠、しばらくの間、見といてあげるから久しぶりに2人でゆっくりしなさい」
母さんも瑠夏のこと気にかけてる
「そうする。たまには瑠夏も休ませないとな。愛花、バイバイ」
「パパぁ…!!」
愛花は瑠夏と一緒で甘えん坊なヤツ
泣き出してしまったが母さんに任せて瑠夏のところへ行く
「瑠夏、病院行くぞ」
「嫌だっ」
「風邪治さないと何処にも連れていかないから。せっかく母さんにゆっくりして良いって許可出たのに…」
「じゃあ、行く」
瑠夏はゆっくりと立ち上がり俺に寄り掛かる
俺は瑠夏を掛かり付けの病院へと連れて行った
「熱はないし疲れから来てるみたいだね。とりあえず数日間は安静にしておいて様子見てね」
「はい。分かりました。ありがとうございます」
薬を貰い瑠夏を連れ病院を出る
「瑠夏、何が食べたい?」
一応、聞いておかなきゃな
「柔らかいもので良い。プリンとかヨーグルトとか…」
瑠夏が体調を崩すと柔らかいデザート系や果物しか食べない
俺は瑠夏の手を引き近くのスーパーへ行く
久しぶりに買い出しするか…
日用品でいくつか買わなきゃいけないものあったしな
瑠夏の体調も考えて早めに買い物を済まし家へ帰る
「瑠夏、着替えてベッドに寝てろ」
「分かった」
大人しく俺のいうことを聞き部屋に戻った
俺達は今も瑠夏が一人暮らしをしていたアパートに住んでいる
4人には少し狭い気がするけど本格的に働き始めたら…なんて思ってる
そのために少しずつ貯金してるんだ
瑠夏にだけ負担を掛けるわけにはいかないから…
「瑠夏ー?少しは食べて薬飲めよ」
「ちゃんと食べるからその前にギュッてして?」
「はいはい。おいで」
瑠夏は思い切り抱き着いて来た
健斗達が産まれてからバタバタでまともに瑠夏の相手も出来ていなかった
「久しぶりに甘えな。こういう時にしか相手出来ないから」
本当は甘えたくて仕方なかったはずの瑠夏
「ヨーグルト食べる」
「自分で食べられるよな?」
小さく頷きテーブルの上にあるヨーグルトをゆっくり食べる
「ごちそうさま」
処方された薬を飲んだ瑠夏はベッドに寝転がる
これはまだ体調が優れていない証拠
「熱は?計ったんだろ?」
「なかったよ…」
「そうか。片付けてくるな?大人しく寝とけ」
「早く戻って来てね」
瑠夏は未だに1人にすると不安になるらしく必ず“早く戻って来てね”と言う
俺は急いで片付けて瑠夏のところへ戻る
瑠夏は椅子に座っていた
寝とけって言ったのに…
「丈瑠が居ないと眠れない」
可愛いこと言いやがって。
そんなこと言われたら嬉しくなるじゃねぇか…
「ほら、おいで」
俺はベッドに寝転がり瑠夏を呼ぶ
ニコッと笑って嬉しそうに近寄って来るのは高校時代から変わってないな
それも瑠夏の可愛いところだけど…
「久しぶりにこうやって抱きしめてもらった気がする。やっぱり丈瑠は温かいから落ち着く」
俺の胸に顔を埋めて呟く
「無理しすぎなんだよ…お前」
「だって、愛花と健斗はちゃんと育てたい。キツいけどあたしがやらなきゃ…あたしみたいな思いはして欲しくない」
「頑張りすぎだから体調崩すんだよ。勉強もバイトも子育てもあるんだから無理するな」
俺は瑠夏の頭を撫でた
「丈瑠、ごめんね…」
「謝るな。次、謝ったらキスするぞ?」
ちょっとイジめてみる
「良いよ…?丈瑠とならキスしたって構わない」
……ヤバッ
純粋に可愛いと思った
コイツは俺を狂わせる天才だ
「お前、可愛すぎ」
「丈瑠だから…んっ///」
瑠夏の言葉を遮ってキスを繰り返す
久しぶりに過ごす2人きりの時間
それが嬉しくて仕方ない
「はな…して…んっ、あっ」
瑠夏の甘く可愛い声が更に俺を狂わせる
「お前…普段、どれだけ俺が我慢してると思う?」
「分かんない」
「2人の相手も良いけどたまにはこうやって俺の相手もしろよな」
そして、軽くキスをする
「どうせ、キスするんでしょ?」
「瑠夏とのキスって安心するの。それ以外に理由はない」
真っ赤な顔になった瑠夏の頭を撫でる
「なぁ、瑠夏?」
きちんと座り直し後ろから瑠夏を抱きしめる
「…ん?なに…?」
自然と上目遣いになる瑠夏
「高校の入学式覚えてる?」
「入学式?覚えてるような覚えてないような…」
健斗達居なくて時間はあるし話しても良いよな
「俺が瑠夏を好きになった理由。」
「屋上で泣いてるあたしを見て好きになったとは聞いたことあるよ」
実はそれ以外にも理由がある
「高校の入学式の日、いつものように圭輔と学校に行った」
懐かしい記憶を思い出しながらゆっくり話す
「でも、圭輔が居なくなって探してたらバス停の近くにある桜の木を寂しそうに眺めてた子が居た」
「それって…もしかして」
「思い出した?それが瑠夏だったんだよ」
葉月高校の校門の近くに大きな桜の木が何本もある
「あたし、人混みが嫌いでクラス替えの名簿を見に行ってくれてた美春をあの桜の木の下で待ってたの」
「あの女の子って萩原だったんだな。それで瑠夏は名前を呼ばれて満面の笑みで近寄って行った。その時の笑顔が忘れられない」
凄く安心したような可愛らしい笑顔だったから
探したんだけど人数が多くて見付けられなくていろんな所から情報を仕入れて来る圭輔に聞いたんだ
「まぁ、簡単に言えば俺の一目惚れだった」
そして、またキスをする
「丈瑠?あたしを選んでくれてありがと。じゃあ、寝るね」
そういった瑠夏はあの時と同じような満面の笑みだった
スヤスヤと寝息を立てる瑠夏の頭を撫でる
俺にくっついて眠る姿も変わってない
健斗達が産まれてからはほとんど休めてないはず…
だから、体調を崩すんだ
瑠夏自身は“大丈夫”とか言ってるけど実際は大丈夫じゃない
健斗達が居るから甘えるのだって我慢してるのが分かる
甘えてる部分を見せたくないんだろう
だから、こういう時くらい思いっきり好きなようにさせたい
俺が初めて一目惚れして一緒に過ごしていくうちに凄く楽しくて離したくないと思った
“この子となら未来を約束しても大丈夫“って思ったのが瑠夏だったんだ
毎日感じる君の温かさ
それが凄く安心出来た
子育てしながらいろんなことをするのは大変だけど…
君が居るから大丈夫
今日も子供達と君の温もりを感じながら過ごすのです