「沙穂、健斗の面倒見てくれるか?」
「うん。分かった」
「飯は?食ったか?」
「食べて来てない。早くお兄ちゃん達に会いたくて…お姉ちゃん、作ってくれるかな?」
「聞いてくるから待ってな。」
俺は愛花を抱いたまま瑠夏のところへ行く
「瑠夏、沙穂がな。ご飯食べて来てないって。」
「光莉さんから連絡あったからちゃんと沙穂の分まで作ってるよ」
さすが…瑠夏だ。
「沙穂ー!!飯作ってるってよ」
「本当?お姉ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。早く食べて学校行きなさいよ」
瑠夏も母親らしくなって来てる
それにいつの間にか“沙穂”って呼ぶようになってるし
ついでに健斗と愛花が産まれてから更に可愛さと綺麗さが増した
「はい。出来た!!健斗、パパと沙穂と一緒に先に食べてて。愛花のご飯作らなきゃ」
バタバタしながら朝食を食べ準備を終えると健斗と愛花を保育園に連れて行く
「お姉ちゃん、お兄ちゃん行ってきます。」
「気をつけてね」
途中で学校行きの沙穂と別れる
「愛花、健斗。バイバイは?」
瑠夏が言うと2人は小さく手を振る
それが可愛くて仕方ない
子供達の成長を日々、実感しているのであった
「健斗、今日はどっち?」
沙穂と別れてから保育園に行くまでどちらに抱かれるかを聞くのが日課
「今日もパパ…」
俺は健斗を抱き上げた
最近は愛花が瑠夏に抱かれないと泣くから健斗も我慢してるんだよな
さすが、お兄ちゃんだ
健斗だって甘えたい時期なはずなのにな…
「瑠夏ー。おはよっ」
遠くから聞こえるのは捺稀の声
「おはよ。あら、圭輔は?」
瑠夏も圭輔のことを呼び捨てで呼ぶようになっていた
「優雅と来てるはずだよ…」
捺稀達にも愛花と同い年の男の子が産まれた
名前は優雅(ユウガ)
愛花より1ヶ月くらい早かったが…
「捺稀、早いって…」
優雅を抱いた圭輔がやって来た
「はい。交代」
捺稀は優雅を抱いていた
「丈瑠、愛花抱いててくれる?
」
瑠夏は俺に愛花を渡す
「健斗、おいで?」
「やったぁ」
さっきまで落ち込んでた健斗が笑顔になった
「ママぁ…」
「愛花、保育園まで我慢してね」
瑠夏が頭を撫でると落ち着いたのか俺に抱かれていた
瑠夏の言ってることが分かってるらしく泣くことを止めた
「捺稀、今日バイト?」
「あっ、うん。だから優雅は保育園に預けるよ。瑠夏は?」
「あたし、百合さんが愛花のこと見てくれるらしいからバイト行くよ」
俺と圭輔は家から近い大学に通ってる
瑠夏と捺稀も同じとこ
ただ、2人は通信制ってなだけ…
普段はバイトもしつつ時間を見付けて勉強してる
子供の世話や家事、バイト、勉強…
それをこなしている瑠夏は本当に尊敬する
ただ、疲れてるみたいだけどな。
愛花はまだ保育園には行っていない
その代わり瑠夏のバイト先で優真さんの奥さんである百合(ユリ)さんが愛花の面倒を見てくれている
優真さんも健斗が産まれてから結婚して未だに子供が出来ないからか良く愛花の面倒を見てくれて可愛がってくれてるから助かってるんだ
「ほらほら保育園に着いたよ。愛美さん。今日もよろしくお願いしますね」
「瑠夏、毎日キツくない?無理しないでよね」
「分かってますって。丈瑠が手伝ってくれるから助かってるますよ」
「そう。なら良いんだけど…愛花?バイバイ」
愛美さんは愛花の頭を撫でると健斗と優雅を抱いて行ってしまった
「丈瑠、愛花抱くの交代しよっか?」
保育園を出て学校へ向かう途中に瑠夏が言ってくれた
「キツくねぇの?」
さっきまで健斗を抱いてたのにさ…
「だって、丈瑠は今から学校でしょ?」
瑠夏は俺が学校の時、必ず愛花と一緒に学校の近くまで送ってくれる
散歩のためだとか…
気分転換もあるみたいだけどな
ギリギリまで瑠夏と一緒に居たい俺としては嬉しいけど。
「丈瑠、気をつけて行って来てね?」
俺は毎回、心配してくれる瑠夏が可愛くてキスをする
「愛花が居るのに止めてよね。それに誰かに見られてたらどうすんの?」
なんて言いながらも嬉しそうだ
「毎回、甘い雰囲気漂ってるねぇ~」
俺達をからかうように現れた圭輔
「愛花ぁ。お前のパパは独占欲強いみたいだね~」
圭輔は瑠夏から愛花を抱き上げるが…
「パパぁ…」
珍しく“パパ”って言ってくれた
「ほらほら、2人とも急がないと遅れるよ?」
瑠夏は俺から愛花を抱き上げ急ぐように言われた
「愛花、パパ行ってくるって。」
“バイバイ”と笑顔で手を振る愛花
「行ってらっしゃい」
「「行ってきます」」
俺は圭輔と急いで学校へ向かった
「2人ともギリギリ」
そういっていつものように俺らをからかうのは一毅
柳原一毅(ヤナハライツキ)
大学に入って仲良くなったヤツ
俺達に子供が居るって知ってる唯一の人
周りの人には言っていない
噂になるから…
いつものように授業を受けバイトに行く
「丈瑠、お疲れ様。今日も頼んだぞ」
俺は高校時代から続けているコンビニでのバイトをなんとか頑張ってる
そして大学に入ってしばらくしてから週に2回ほど優希さんのところでもバイトを始めた
美容師にも興味あったし勉強してみるのも良いかなと思って…
掛け持ちは大変だけど、先のことを考えて少しずつ貯金したいと思ったしな
瑠夏だけに負担を掛けたくないし俺に出来ることはしっかりとやるつもり
「愛花も、もうすぐ1歳だろ?」
「はい。今は完全なるママっ子ですけどね」
瑠夏が居ないと泣き出してしまうんだ
あまりに瑠夏にベッタリだからたまに淋しくなるんだけどな
「まぁ、そんな時期もあるさ。お前も父親なんだな…」
「俺、父親らしいこと出来てるか未だに不安になるんですよ」
「瑠夏ちゃんが喜んでくれればそれで良いんだろ?」
“はい”と頷いた
瑠夏は何事にも一生懸命取り組んでる
それなりに体調崩すことも多いけどな
……頼ってばっかりだけど俺、ちゃんと役立ってるかな?
「お前はお前らしくやれば良いさ。他に理由はねぇよ」
修司さんの言葉でモヤモヤしてた気持ちがが消えたような気がした
それからは必死にバイトが終わるまで仕事に取り組んだ
~♪~♪~
瑠夏からの着信だ
こんな時間に掛けてくるなんて瑠夏にしては珍しい
普段はほとんど掛けて来ないのに…
「もしもし、どうした?」
「すぐそこまで来てるんだけど2人連れて帰るのは大変だから一緒に帰ろ?」
「分かった。すぐに行くから待っててな」
俺は電話を切り早々と準備をする
「丈瑠、どうした?」
「瑠夏達、迎えに来てるらしいんで帰りますね。健斗達いますけど見に来ますか?」
「おう。久しぶりに健斗に会おうかな。」
健斗は修司さんのこと大好きなんだ
「瑠夏、お疲れ様」
「急にごめんね…丈瑠こそお疲れ様」
「荷物持とうか?愛花を抱いてると重いだろ?」
「お願いします。ありがとう」
俺は瑠夏から荷物を取り瑠夏の分の荷物も持つ