【完】優しい彼の温もりに包まれて

「でも、驚いたなぁ。瑠夏に彼氏が出来てたなんて。」


「でも、丈瑠に出会うまでは付き合ってなかったんだよ。響と別れてから付き合うの怖くてさ…」


「あんな別れ方したからだよな…ごめん。でもカッコイイ奴、見付けたな」


まさか謝ってくれるとは思ってもなかったし丈瑠のこと褒めてくれるなんてびっくりだ


「謝らないで?またこうやって話が出来ただけでも充分だから…」


こういう風に響と再会しなければずっとモヤモヤしたままだった


「瑠夏に今でも彼氏が居なかったらやり直して貰うつもりだった。」


「えっ…?」


いきなりのことでびっくりしたあたし


「久しぶりに瑠夏を見た時に更に可愛くなってたからアイツから無理矢理でも離そうかと思ったけど…」


響はそこで言葉を途切らせた
「でも…アイツには負けたよ。今の瑠夏、めっちゃ幸せそうだもん。笑う回数も増えたみたいだな」


やっぱり丈瑠と一緒で響にも分かっちゃうみたい


「本当に最後のお願い聞いてくれる?」


「何?」


「最後にキスして?そしたら諦めるから」


「1回だけだよ?じゃないと丈瑠に怒られる」


「分かってる。あの時みたいにキスして終わらせて…」


響の真剣な目に断ることが出来なかった


あたしが小さく頷くと響はニコッと笑って優しくキスをする


本当にあの時に戻ったみたい


キスの間、響との楽しい思い出が蘇る


あの頃はまだ幼かったあたし達


でも、今は全てを受け入れたからこうやって話すことが出来たんだ


あたしが前に進めるようになったのも丈瑠が居てくれたからだよね
「瑠夏、ありがとう。俺が愛せなかった分、アイツにたくさん愛してもらえ!!」


「うん。そうだね。あのね、もうすぐ子供が産まれるんだ…そしたら会いに来てくれる?」


「あぁ、分かった。時間見つけて会いに行くよ。その時は笑顔で会おうな?」


「もちろん。ねぇ…響、あの時あたしのこと愛してくれてた?」


ずっと聞きたかったこと


あの時は急に別れたから聞きたくても聞けなかったんだ


「不器用なりに一生懸命愛してたよ。凄く楽しかった。ありがとう」


響の笑顔は今までで1番輝いていた


「瑠夏、約束な?」


「約束?」


「笑って過ごして?瑠夏は笑顔が可愛いんだから」


「うん。響もね」


「ねぇ、そろそろ返してくれない…?」


声がして振り向くとそこには居るはずのない丈瑠の姿
「なんで居るの?」


丈瑠にバレないように隠れたつもりだったのに


「待ちくたびれたんだよ。なかなか戻って来ないから」


…ちゃんと戻るって言ったのに。


丈瑠もお父さんと一緒で心配性なんだから


「お前が変なヤツなら奪おうと思ってたけど瑠夏に対しては優しすぎるんだな。瑠夏の言うことが分かる気がするな」


ハハッと笑う響


「お前に瑠夏を無理矢理奪われても奪い返すけどな?」


「お願いだから喧嘩はしないで!!」


喧嘩だけは嫌なの


あたしは丈瑠に抱き着いた


「大丈夫。殴り掛かったりはしないから」


丈瑠はあたしに優しく語りかける


「瑠夏、幸せになれ。俺の分まで…」


「響も本気の恋…見付けてね?」


「あぁ、分かった。またな。」


響はスッキリとした顔でこの場を去っていった
「ちゃんと話出来たみたいだな」


「うん。なんかスッキリした。丈瑠、キスして?」


「可愛いヤツ…」


丈瑠のキスは安心する


やっぱり丈瑠が1番だね


「瑠夏、これ。」


丈瑠が渡したのはさっき菜々さんから受けとったもの


「菜々さんから瑠夏へのプレゼントだって。」


……菜々さんから?


「瑠夏に何かプレゼントしたかったらしくてさ。これは俺からな?」


丈瑠が渡したのは小さな袋


「2つとも開けて良い?」


「どうぞ」


元居たベンチに座り袋を探る


最初に丈瑠から貰った物を開けてみる


中に入ってたのはイルカのストラップとペンギンのストラップ


「ペンギンは捺稀とお揃いでイルカは俺とお揃いな?」


嬉しくて泣きそう


菜々さんからは丈瑠とお揃いのネックレスだった
「ありがと。これはあたしから…」


さっき買ったものを渡した


「タオル?」


「何が良いか分からなくて…。バイトの時でも使ってくれると嬉しいな」


「じゃあ、バイトの時にでも使わせて貰うよ。瑠夏から貰えるものは何でも嬉しい」


喜んでくれて良かった


「ねぇ、これからも一緒に居てくれる?」


「当たり前。言ったろ?離さないって。」


丈瑠の決意は固いようだった


「丈瑠?愛してる…」


「おっ、瑠夏からその言葉、聞けるとは思わなかった。」


「凄く恥ずかしいんだからからかわないでよね!!」


多分、あたしの顔真っ赤だ


「瑠夏から聞けて嬉しいよ。愛してる。これから先もずっとな?」


あたし達は誰も居ない場所で抱き合って笑いあったのだった
君と過ごす日々はとても楽しくて温かい


日々、頑張ってる君が愛おしいと思える


子供達の前では母親


そして俺の前では普通の女の子


そんな君と過ごす時間


凄く安心出来るんだ

*番外編*



------3年後



丈瑠Side


「丈瑠ー?健斗の着替え手伝ってー!!」


朝早くから愛しい瑠夏の声が響く


俺は黙々と学校へ行く準備をしていた


あれから3年の月日が経った


俺達は今、21歳になった


高校を卒業して今は一応、大学3年生


「パパぁ…お着替えする」


自分の洋服を俺に渡す健斗(ケント)


高校3年生の時に瑠夏の元カレである響と再会ししばらく経ってから産まれたのがもうすぐ3歳になる健斗


俺達が18歳の時に産まれた子


「はいはい。お利口にしないとママに怒られるからな?」


「はぁい。」


俺は健斗の着替えを手伝った後、抱き上げて瑠夏のところへ向かう


「瑠夏、終わったぞ?」


「ありがとー!!助かったよ」


瑠夏は愛花を着替えさせていた