「お父さんに懐いてるみたいなので大丈夫だと思います」
一応、聞いてみなきゃだけど…
お父さんのことだからすぐに許してくれると思う
お母さんだったら駄目って言いそうだけどね…
----トントン
「瑠夏、入るぞ」
入って来たのはお父さん
「朝も来たのにまた来てくれたんだ」
「愛美ちゃんから預かってる物があってな。暇だしまた来てみたんだ」
……愛美さんからの預かり物?
「後でゆっくり開けてみれば良いさ」
あっ、そうだ!!
今のうちに聞いておこう
「お父さん、お正月に沙穂ちゃんも一緒に連れてって良い?」
「あぁ、構わないよ。沙穂ちゃん、人がたくさん来るけど大丈夫かい?」
お父さんは沙穂ちゃんの目線に合わせて聞く
「うん。お兄ちゃんとお姉ちゃんが居れば大丈夫だよ」
「そっか。分かった」
お父さんは笑顔で沙穂ちゃんの頭を撫でる
「忠弘さん。すみませんね。沙穂まで…」
「良いんですよ。丈瑠君と沙穂ちゃんが居た方が瑠夏の気も紛れるでしょうからね」
お父さんは沙穂ちゃんを抱き上げた
「面倒は私達でみます。お2人でゆっくりして来て下さい。娘がお世話になってばっかりなので…」
お父さんが子供好きな人で良かった
「おじちゃん、ありがとう」
「いいえ。瑠夏、沙穂ちゃんはお前の妹のようなもんだろ?」
「うん。そうだね」
「良かったな。丈瑠君、こんな娘だけどよろしく頼むよ?」
「はい。分かりました」
「じゃあ、帰るから」
そう言って沙穂ちゃんを降ろし頭を撫でて帰って行った
「沙穂、私達も帰ろうか」
「うん、お姉ちゃん、またね」
あたしは寝たまま沙穂ちゃんに手を振る
「光莉さん、お見送りいけなくてごめんなさい」
「良いの。気にしないで。じゃあね」
光莉さんは沙穂ちゃんを抱き病室を出て行った
「丈瑠、お見送り行かなくて良かったの?」
「あぁ、瑠夏の傍に居る」
優しすぎるよ…。
「本当に良かった?お正月に一緒に来てもらって」
「大丈夫。祖母さん達は旅行が好きでな。何年かに1度親父と母さんの両方の家族で旅行に行ってるんだ。」
……そうなんだ
「だから、心配しなくて良い。俺も瑠夏の祖母さん達に会ってみたいし」
「お父さんのお母さん達なんだ。お母さんの方は亡くなったの」
あたしが小さい時に…
だから、顔は知らないに等しい
「俺こそごめんな?急に着いて行くことになってしまって…」
「良いの。お父さんが言ってたように丈瑠達が居た方が気も紛れるから」
お母さんと喧嘩しないで済むから助かった
丈瑠が居る事でお母さんの口数が減るはず…
----トントン
「瑠夏ちゃん、ご飯食べれる?」
千絵さんが心配そうに入って来た
「少しだけなら…」
「無理せずにゆっくり食べてね」
丈瑠にはコンビニの袋を渡していた
千絵さんは渡すものだけ渡して出て行った
「瑠夏、食べれるか?」
「うん。食べる」
あたしは少しずつゆっくりと食べ始めた
「ごちそうさまでした」
半分くらい食べて丈瑠に片付けてもらった
頼りっぱなしで申し訳ないんだけどね……。
「体調戻ってないし早く寝ろよ。じゃないと寝不足でまた体調崩すぞ。」
いつもあたしのことを心配してくれる丈瑠。
ある程度落ち着いたら何かお礼しなきゃいけないかな…
「分かってるよ…。いつも頼ってばっかりでごめんね?」
「大丈夫だから…瑠夏は今まで甘えられなかった分、甘えられる時に甘えなきゃな」
あたしは歯磨きをしてベッドに横になる
丈瑠は一時も離れずにあたしの傍に居てくれた
“丈瑠が離れて行ったら
”
なんて考えると怖い
それだけあたしは丈瑠を必要としているんだ
「丈瑠、ありがとね」
「俺が好きでやってることだから気にするな」
あたしの頭を撫でながら笑顔を向けてくれた
「おやすみなさい」
あたしは丈瑠の手を握ったまま眠りについた
君が笑顔になればそれで良い
喜んでくれると俺まで嬉しくなる
今まで、気付いてあげれなかったことが多かった
だから、その分、君が笑顔で居てくれることを望んだ
どうか、これから先も俺の隣で笑っていて下さい
それが望みだから…
丈瑠Side
瑠夏が退院して数日
正直、体調が優れない日が続いている
今は年明け前で街は賑やかだ
「瑠夏、今日の体調は?」
「今日はだいぶ楽だよ」
退院してからは自分の住むアパートに戻って来た
ほとんど俺が付きっきり
母さんや沙穂や忠弘さんは頻繁に様子を見に来る
実頼さんとは会っていない
“行く”って言っても“喧嘩になるから”ってことで忠弘さんが止めているらしい
そして今日は瑠夏の体調が落ち着いてるってことで捺稀達と出掛けることになっている
「丈瑠、準備出来た?」
「あぁ、瑠夏こそ準備出来たのか?」
「うん。髪の毛結んで欲しいな」
藤室とのことがあってから更に甘えてくるようになった瑠夏
それだけ不安なんだよな
「はい。出来たぞ」
「ありがと。さすが丈瑠。器用だね」
沙穂のをやっていたからか人の髪の毛を結ぶのは得意
とりあえず簡単に1つに結んでおく
瑠夏はお腹が目立たないような格好をしている
「行くぞ?」
「うん。すぐ行くから外で待ってて。」
瑠夏を1人にするのは不安だが俺は玄関で待っておく
「お待たせ。ごめんね」
「じゃあ、行くか」
俺は瑠夏の手を引く
「瑠夏ー!!」
遠くで叫ぶ捺稀
そしてそれを愛おしそうに見つめる圭輔
「捺稀、圭輔君。おはよ」
「じゃあ、行こ」
瑠夏と捺稀は楽しそうに歩いていく
本当はこんな風に遊びたかったんだろうな
屋上で瑠夏が言ってた言葉を思い出していた
今、楽しそうにしている瑠夏を見ると微笑ましくなる
「2人とも楽しそうだな」
隣で感心しながら話す圭輔
「楽しそうなら良いじゃん。2人ともあんな風に遊びたかったみたいだし」
瑠夏も捺稀も性格が似てるから今を思いっきり楽しんでいるんだろう
やって来たのは近くのショッピングモール
「ちょっと準備して来るね」
捺稀は瑠夏を連れて何処かに行ってしまった
「俺らどうするよ?」
取り残された俺達
「なぁ、丈瑠…俺、捺稀に何かあげたいんだけど何が良いと思う?」
突然、呟いた圭輔
「はっ?お前、俺らより付き合って長いのに何もあげてねぇの?」
「まぁ……」
“しまった!!”という顔をした圭輔
「そういう丈瑠は?」
「俺?ちゃんとあげたし瑠夏からも貰ったぞ?」
「おぉ…!!偉いな」
感心してる場合じゃねぇよ