リビングへ行くと親父が帰って来ていた
「帰ってたんだ」
新聞を見ている親父に話し掛ける
「おっ、丈瑠。ただいま。」
「母さん達は?」
「沙穗を寝かしつけに行ったよ」
…そっか。
食事を食べるために親父の目の前に座る
「学校はどうだったか?」
「また担任が同じだった。圭輔とも同じクラス」
「そっか。そういえばお前、彼女作る気ないのか?」
…何を言い出すかと思えば!!
「今は作る気ない。タイミングに任せるさ」
親父は俺が恋愛感情がないまま付き合ってることを知ってるから…
「タイミングか…俺は、お前が本気で好きになった奴なら良いと思うな」
テーブルの上に置いてあるお茶を啜りながら話す親父
「親父はさ…俺が本気で好きになった奴を連れて来たら許してくれる?」
…これだけは聞きたかったんだ
「もちろんさ。ちゃんと紹介してくれたらな。」
親父もしっかり見てるもんな
「お前が本気で好きになった子なら家に連れてくるだろ?」
「そうだな。連れてくるさ。」
「だろうな。お前は多分、彼女には尽くすタイプだろうから」
「なんで分かるんだよ」
「俺がそうだったからな」
何故か懐かしそうに話す親父
「そうか。じゃあ俺、部屋に戻るわ。おやすみ」
「おう。ゆっくり休めよ」
俺は部屋に戻って勉強しようとしたが…
やる気が起きなくてベッドに寝転がった
そしてそのまま眠りについた
泣きたくて泣きたくて…
でもね、怖くて泣けないの
家に居ても楽しくない
学校でも1人になりたくて屋上に行ったの
誰も居なくてホッとしてたのに…
顔も名前も知らない君に出会った
君は何も言わないあたしの隣に居てくれたんだ
それが嬉しくて安心出来たの
瑠夏Side
今日もいつもと同じ時間に目が覚める
さっさと準備してリビングへ向かう
「おはよ」
あたしはお母さんに挨拶をする
「おはよう」
今日も機嫌が悪いな…
お母さんは機嫌が悪いと顔に出る
「お父さん、おはよう」
「おはよう。今日から授業か?」
新聞を読みながら聞いてくる
「うん。昼までね。その後バイト」
「あんまり遅くなるなよ」
「分かってるよ」
お父さんは心配性なんだから…
バイトをしてるのはお母さんは知らない
「瑠夏、さっさとご飯食べなさい!!」
「分かってるって!!」
お母さんは機嫌が悪いと口調がキツくなる
あたしまで機嫌悪くなるじゃん
あたしはキツい口調で言われることが嫌いなんだ
「もう、行くから」
まだ時間があるから歩いてでも間に合う
あたしはテーブルに置いてある果物だけを食べて家を出た
「瑠夏ー?おはよ」
遠くから咲那が声を掛けて来た
「クラスはどう?」
咲那は隣で話しを始めた
「まぁまぁかな?」
あたしは必要最低限のことしか話さない
咲那とは家も近いけど最近は遊んだりもしていない
昔は毎日のように一緒に遊んでたけどね
「バス来たよ。乗ろうか」
あたし達はバスに乗り込んだ
「今日は座れない…か」
仕方なくあたしは立っていることにした
「美春、おはよう」
美春に気付いた咲那は挨拶をする
「瑠夏、咲那。おはよ」
美春はあたしと違って誰とでも仲良くなれるからな。
……羨ましいな。
美春と咲那が話し始めたのであたしは黙ったまま
うん…気まずい。
早く降りたい
バスが着き降りると捺稀と圭輔君がいた
捺稀が救世主に見えた
「瑠夏ー!!おはよ」
「捺稀、圭輔君おはよ」
あたしは2人に挨拶をする
「瑠夏ちゃん、ごめんね。捺稀がどうしても一緒に行きたいっていうからさ」
「ううん。待っててくれて嬉しい」
「瑠夏、あたし行くよ」
「瑠夏ちゃん、その娘は?」
そういえば美春もいたんだった
「この子はあたしの親友の萩原美春。」
「萩原美春です。よろしくね」
美春は圭輔君に自己紹介をしていた
「美春ちゃんか…俺、篠崎圭輔。よろしく」
「ねぇ、圭輔。丈瑠君は?」
「丈瑠ならあそこ」
圭輔君は校門の方を指差した
一瞬、目が合ったような気がするけど気のせいかな?
「じゃあ、俺行くわ。丈瑠のこと待たせてるし。捺稀、後でな?」
圭輔君は丈瑠という名前の男の子のところへ行ってしまった
「ねぇ…捺稀。圭輔君とはどんな関係?」
そういえば、美春は知らないんだった
「圭輔はあたしの彼氏なんだ」
「えっ…マジ?なんか意外なんだけど。」
圭輔君はチャラいから良く遊んでそうって噂流れてたもんね
「案外優しいんだよ。捺稀にはね」
「そうなんだ。じゃあ、教室に行くね」
途中で美春と別れあたし達も教室へ向かった
「ねぇねぇ、丈瑠君って圭輔君の友達なの?」
「あっ、うん。保育園からの親友なんだって。だから仲良いよ」
「あたしと咲那みたいだね」
つい本音が漏れてしまった
「瑠夏、どうした?」
心配してくれる捺稀
「ううん…なんでもないの」
「皆揃ったかー?席に着け」
朝から元気な多川先生
「先生、ちょっと屋上行って来ます」
「顔色悪いみたいだな。気をつけろよ」
あたしは先生に一言告げると教室を出た
屋上に行く途中に美春に遭遇
「瑠夏、どうした?顔色悪いじゃん」
「ちょっとね…今から屋上行って来る」
「咲那のこともあるんでしょ?朝から元気無かったし。また親と喧嘩でもしたの?」
「うん…」
それ以上は言葉が出なかった
美春はあたしがお母さんと良く喧嘩することを知っている
だから、心配してくれてるんだ
「無理だけは禁物だからね」
美春はそれだけ告げると去って行きあたしも屋上へ向かった
運よく屋上には誰も居なかった
「良かった」
一言呟き壁にもたれ掛か
る
…今日は晴天だね。
あたしはポケットの中にある携帯を開いて時間をチェックする
来る途中にチャイムなったし1限目始まったかな?
あたしが持って来たのは携帯とタオルだけ…
その他のものは全て教室に置いて来た
捺稀や美春や多川先生には心配掛けちゃったけどさ…
今日ぐらい思いっきり泣いても良いよね?
誰も居ないし…
普段泣けないから。
「もう疲れたよ…」
そう呟くと同時に涙が流れた
親には怒られるし昔のことはフラッシュバックするし
いつになったら忘れることが出来るのかな?
誰も居ないこの静かすぎる屋上であたしは声を押し殺して1人泣き続けた