居場所なんて…
どんなに探しても見つからなくて。
寂しくても寂しいと言えなかった
泣けなかった…
此処にはあたしの居場所がないと思った時
思い出したのはやっぱり君の笑顔と優しさだった
瑠夏Side
丈瑠と元の関係に戻り嬉しい半面…
咲那や美貴ちゃんとのことがあるから学校に行くのが怖い
でも、丈瑠達がいるから頑張れそう
そう思うあたしって単純
丈瑠に“瑠夏は1人じゃない”って言われた時、凄く安心出来た
また丈瑠ん家にお世話になってる
家にいたら不安になるし喧嘩だってするだろうしね
その分、丈瑠がいると安心出来る
でも、本当申し訳ない
「瑠夏、今日ね…全部自習なんだって」
丈瑠達と学校に行っている途中、捺稀が思い出したように話し出した
「珍しいね。全部自習なんて」
「1日中、職員会議らしいよ」
葉月高校は年に1度1日かけた職員会議がある
自習っていっても復習のプリントが大量に配られるんだけどね
「瑠夏、捺稀。ちょっと良いか?お前らもな?」
あたし達を呼んだ多川先生
そういえば、丈瑠達も居たんだった
「なんですか?」
一応、聞いてみる
「お前達は東棟の空き教室使って良いから」
それだけ告げると慌ただしく去って行った
職員会議なだけあって忙しいんだなぁ…
「教室寄らずに行こ。」
捺稀に手を引かれ東棟へ行く
そこには4人分の大量のプリントが準備されていた
しかも名前書いてある
「俺だけ多くない?」
プリントの量を見ながら嘆く圭輔君
良く見ると皆プリントの内容が違う
「お前は捺稀と特訓だな」
何かを悟ったように話す丈瑠
「俺達は隣の教室行くから。メドがついたら来ても良いぞ」
捺稀は“多分、無理だね”なんて呟いていた
「丈瑠、酷い」
ボソボソと呟いている圭輔君をよそに荷物を持ちあたしの手を引く丈瑠
何で隣の教室なんかに…
「俺らが居たら圭輔が勉強しないから」
…そういうことね
「ねぇ、丈瑠…」
「ん?」
「あたし1回家に帰るね?」
「大丈夫か?まだそんなに時間経ってないのに」
「大丈夫じゃないけど帰らなきゃ」
「もっと居て良いんだぞ?」
「うん。ありがと。」
丈瑠が心配してくれてるのが分かる
あたしは思いっきり抱き着いた
「なんかあったらまたこうやって抱きしめてね?」
恥ずかしくなって丈瑠の胸に顔を埋めた
「可愛いこと言いやがって…」
「あたし可愛くないもん」
素直じゃないし強がっちゃうし…
「いや、お前は可愛い。髪型変えて他のクラスの奴らも狙ってるんだぞ」
……そうなんだ。
丈瑠に“可愛い”って言われただけで十分
「でも、あたしは丈瑠だけ。丈瑠が居れば良い」
「やっぱ反則だ…」
「こうやって甘えるのも抱きしめられるのもキスするのも全部丈瑠だけなの」
言った自分が恥ずかしい
「瑠夏、顔上げて?」
そんな優しい声で囁かないで…
「…ん///」
ほらね、キスすると思った
でも、丈瑠がしてくれるキスは嫌いではない
むしろ落ち着くし安心する
「俺だって瑠夏だけだから…」
そう言ってくれると嬉しい
「瑠夏ぁ…」
隣の教室から涙目の捺稀がやって来た
「どうしたの?」
「圭輔がぁ…」
圭輔君が…?
何かしたのかな?
「圭輔がいくら教えても内容を理解してくれないってか?」
「さすが丈瑠君。まさにその通り!!」
「丈瑠、良く分かったね?」
「一応、一緒に居る時間が長いから分かるさ」
……にしても凄い
とりあえず3人で隣の教室へと向かう
「圭輔、お前理解する気あるのか?」
丈瑠の声が一段と低いような気がする
「あるよ~。だけど…」
「じゃあ文句言わずにやれ。言い訳はなしな?頑張って教えてる捺稀の身にもなれ」
「はい。ごめんなさい」
凄い。圭輔君が黙った
「捺稀、これで大丈夫だと思うぞ?」
「ありがとー。こういう時は丈瑠君に頼まなきゃね」
“酷すぎる”なんて呟きながら勉強をする圭輔君
「じゃあ、俺らはこれで」
丈瑠はあたしの手を引き隣の教室へ戻る
「あんなに言っちゃって良かったの?」
「アイツはあのくらい言わなきゃ分かんねぇよ」
丈瑠の迫力には負けた
「その前に瑠夏は自分の心配しろ。なっ?」
急に口調が優しくなりあたしの頭を撫でる
「うん…やっぱり丈瑠は優しいよ」
「そうか?俺が優しいのは瑠夏だけだぞ?」
「そんなこと言わないでよ。嬉しくて泣きそ」
最近、涙腺緩いのに…
「泣け。勉強は落ち着いてからで良い」
あたしは思いっきり丈瑠に抱き着いた
「今日は甘えん坊だな?そんな瑠夏も可愛いけどね」
「だってぇ…」
丈瑠にしか甘えられないんだもん
「瑠夏の言いたいことは分かってるから」
優しく微笑みながらあたしの頭を撫でた
それが嬉しくて泣き出してしまった
丈瑠はそんなあたしを放らずに抱きしめていてくれた
「落ち着いたか?」
「うん。ありがと」
あたしは丈瑠から離れようとしたが…
態勢を変え後ろから抱きしめられたままだ
「瑠夏、好きだ」
あたしの肩に顔を乗せて囁いた
「どうしたの?」
「ただ言いたくなっただけさ」
びっくりした…
でも、恥ずかしい
「あたしも好き…だよ?丈瑠だけだからね」
なんて言ったらまた唇を塞がれていた
「お前、本当に反則。可愛すぎ」
「恥ずかしいから言わないで」
恥ずかしくなって顔を伏せた
「可愛いんだから仕方ないじゃん?」
「だけど……」
「瑠夏は可愛いよ。俺が初めて本気で好きになったんだからな?」
今日の丈瑠は一段と優しい
いつも優しいけどね?
「さっ、少しは勉強しような?」
あたし達は勉強に取り掛かった
「丈瑠、此処は?」
「ここはな、この公式使うと分かりやすいぞ?」
なんて言いながら丁寧に分かりやすく余白に公式を書いてくれた
それから1時間くらいしてある程度メドがついた頃、多川先生がやって来た
「2人とも勉強は順調か?」
「はい。ある程度は終わりました」
「そっか。お前達は帰って良いぞ。」
「まだお昼前なのに良いんですか?」
一応聞いてみる
「あぁ、捺稀達は少し後に帰らせるつもりだ。瑠夏ぱバイトがあるだろ?」
「はい。行くつもりではいますよ」
「気をつけてな?丈瑠も帰って良いって笹川先生から許可が出た」
それだけ告げると重たそうな書類を持ち去って行った