「お兄ちゃん、遅い!!」
迎えに行くと沙穗は既に荷物を抱えて座っていた
「丈瑠君、お疲れ様。沙穗ちゃん貴方が来るの楽しみにしてたわよ」
教えてくれたのは沙穗の担当の先生の柿山愛美(カキヤマアミ)さん
俺は沙穗を抱き上げる
「そうですか。ありがとうございます。沙穗、挨拶しな」
「先生、バイバイ」
小さな手を振り笑顔を振り撒く沙穗
「また明日ね」
愛美さんは沙穗の頭を撫でていた
俺はお辞儀をして保育園の門を出た
「楽しかったか?」
「うん。お絵描きして遊んだの」
「そっか…その絵を母さん達にも見せなきゃな」
沙穗は絵を描くのが大好きなんだ
「ただいま」
「お帰りなさい」
珍しく母さんが出迎えてくれた
「あれ?母さん、仕事は?」
俺は靴を揃えながら聞く
「今日はね、早めに終わらせて貰ったの」
だから早かったのか…
「沙穗、弁当箱持って来てね」
沙穗はトコトコと歩きながら弁当箱を持って来た
「はい」
3歳の沙穗にすれば弁当箱は大きいだろう
「先にお風呂入って来たら?お父さんも遅いみたいだから」
…親父はまた残業か?
「沙穗も丈瑠と一緒に入って来なさい。着替えは私がさせるから」
俺は沙穗の手を引きお風呂場へ向かう
先に沙穗を洗ってしまってから後は母さんに任せよう
俺はゆっくり湯舟に浸かる
今日はいろいろあったな
宿題があるしもう上がろう
濡れた髪を拭きながらリビングへ向かう
リビングへ行くと親父が帰って来ていた
「帰ってたんだ」
新聞を見ている親父に話し掛ける
「おっ、丈瑠。ただいま。」
「母さん達は?」
「沙穗を寝かしつけに行ったよ」
…そっか。
食事を食べるために親父の目の前に座る
「学校はどうだったか?」
「また担任が同じだった。圭輔とも同じクラス」
「そっか。そういえばお前、彼女作る気ないのか?」
…何を言い出すかと思えば!!
「今は作る気ない。タイミングに任せるさ」
親父は俺が恋愛感情がないまま付き合ってることを知ってるから…
「タイミングか…俺は、お前が本気で好きになった奴なら良いと思うな」
テーブルの上に置いてあるお茶を啜りながら話す親父
「親父はさ…俺が本気で好きになった奴を連れて来たら許してくれる?」
…これだけは聞きたかったんだ
「もちろんさ。ちゃんと紹介してくれたらな。」
親父もしっかり見てるもんな
「お前が本気で好きになった子なら家に連れてくるだろ?」
「そうだな。連れてくるさ。」
「だろうな。お前は多分、彼女には尽くすタイプだろうから」
「なんで分かるんだよ」
「俺がそうだったからな」
何故か懐かしそうに話す親父
「そうか。じゃあ俺、部屋に戻るわ。おやすみ」
「おう。ゆっくり休めよ」
俺は部屋に戻って勉強しようとしたが…
やる気が起きなくてベッドに寝転がった
そしてそのまま眠りについた
泣きたくて泣きたくて…
でもね、怖くて泣けないの
家に居ても楽しくない
学校でも1人になりたくて屋上に行ったの
誰も居なくてホッとしてたのに…
顔も名前も知らない君に出会った
君は何も言わないあたしの隣に居てくれたんだ
それが嬉しくて安心出来たの
瑠夏Side
今日もいつもと同じ時間に目が覚める
さっさと準備してリビングへ向かう
「おはよ」
あたしはお母さんに挨拶をする
「おはよう」
今日も機嫌が悪いな…
お母さんは機嫌が悪いと顔に出る
「お父さん、おはよう」
「おはよう。今日から授業か?」
新聞を読みながら聞いてくる
「うん。昼までね。その後バイト」
「あんまり遅くなるなよ」
「分かってるよ」
お父さんは心配性なんだから…
バイトをしてるのはお母さんは知らない
「瑠夏、さっさとご飯食べなさい!!」
「分かってるって!!」
お母さんは機嫌が悪いと口調がキツくなる
あたしまで機嫌悪くなるじゃん
あたしはキツい口調で言われることが嫌いなんだ
「もう、行くから」
まだ時間があるから歩いてでも間に合う
あたしはテーブルに置いてある果物だけを食べて家を出た
「瑠夏ー?おはよ」
遠くから咲那が声を掛けて来た
「クラスはどう?」
咲那は隣で話しを始めた
「まぁまぁかな?」
あたしは必要最低限のことしか話さない
咲那とは家も近いけど最近は遊んだりもしていない
昔は毎日のように一緒に遊んでたけどね
「バス来たよ。乗ろうか」
あたし達はバスに乗り込んだ
「今日は座れない…か」
仕方なくあたしは立っていることにした
「美春、おはよう」
美春に気付いた咲那は挨拶をする
「瑠夏、咲那。おはよ」
美春はあたしと違って誰とでも仲良くなれるからな。
……羨ましいな。
美春と咲那が話し始めたのであたしは黙ったまま
うん…気まずい。
早く降りたい
バスが着き降りると捺稀と圭輔君がいた
捺稀が救世主に見えた
「瑠夏ー!!おはよ」
「捺稀、圭輔君おはよ」
あたしは2人に挨拶をする
「瑠夏ちゃん、ごめんね。捺稀がどうしても一緒に行きたいっていうからさ」
「ううん。待っててくれて嬉しい」
「瑠夏、あたし行くよ」
「瑠夏ちゃん、その娘は?」
そういえば美春もいたんだった
「この子はあたしの親友の萩原美春。」
「萩原美春です。よろしくね」
美春は圭輔君に自己紹介をしていた
「美春ちゃんか…俺、篠崎圭輔。よろしく」
「ねぇ、圭輔。丈瑠君は?」
「丈瑠ならあそこ」
圭輔君は校門の方を指差した
一瞬、目が合ったような気がするけど気のせいかな?
「じゃあ、俺行くわ。丈瑠のこと待たせてるし。捺稀、後でな?」
圭輔君は丈瑠という名前の男の子のところへ行ってしまった
「ねぇ…捺稀。圭輔君とはどんな関係?」
そういえば、美春は知らないんだった
「圭輔はあたしの彼氏なんだ」
「えっ…マジ?なんか意外なんだけど。」
圭輔君はチャラいから良く遊んでそうって噂流れてたもんね
「案外優しいんだよ。捺稀にはね」
「そうなんだ。じゃあ、教室に行くね」
途中で美春と別れあたし達も教室へ向かった
「ねぇねぇ、丈瑠君って圭輔君の友達なの?」
「あっ、うん。保育園からの親友なんだって。だから仲良いよ」
「あたしと咲那みたいだね」
つい本音が漏れてしまった