【完】優しい彼の温もりに包まれて

いつも君に笑っていて欲しくて。


しつこいくらいに優しくした


君は半信半疑だったけど俺がしたいからするんだよ


“好き”って言ってくれた時には驚いたけど…


やっと想いが通じたんだ


俺を選んでくれてありがとう
丈瑠Side


瑠夏と付き合い出して数日


母さんと親父に報告したらめっちゃ喜ばれた


2人とも瑠夏のこと気に入ってるからな…


それに俺が彼女作るなんて思ってなかったみたいで。


ビックリされたんだ


沙穂も嬉しくて跳びはねてたっけ…?


“お姉ちゃんが出来た”って…


もちろん忠弘さんにも報告した


本当は忠弘さんは瑠夏を離したくないことも俺は知っていた


でも、瑠夏が安心するのならという理由でOKしてくれた


実頼さんには報告しにくかった


瑠夏は無事退院しバイトを頑張ってる


“来れなかった分まで頑張らなきゃ”って…


無理しなくて良いのに。


退院してからは俺ん家に居る


母さんと忠弘さんとで話し合った結果だそうだ


瑠夏が居ることで沙穂は大喜び


瑠夏は大変なのに必ず沙穂の相手をしてくれる
そして今は夏休み


今日も休みだけど学校へ行く


夏休みなのに学校へ行く理由?


瑠夏の付き添い


捺稀と圭輔も一緒だけどな?


瑠夏が入院して出れなかった授業の内容を俺達で教えてるってわけ。


ついでに圭輔にも教えなきゃいけねぇんだよ。


アイツ頭悪いから。


多川と笹川に頼んで東棟の空き教室を1つ借りている


俺ら4人しかいないから静かではあるが…


語ったり休憩を交えたりしながらしてる


それは圭輔の集中力が続かないから


コイツすぐに集中力切れるんだよね


瑠夏は遅れを取り戻そうと必死なんだけど…


「ここがこうなってこの公式を使うの」


「あぁ~分かった。こうすれば分かりやすいんだね。ありがと」


瑠夏は捺稀の教え方で大体は理解しているようだった
「瑠夏、覚え早いね」


「それは捺稀の教え方が上手いからだよ~。あたし勉強嫌いだからね」


「あら、そう?」


「うん、あたし…何回も聞かなきゃ分からないんだけど捺稀の教え方はすぐ理解出来る」


勉強嫌いっていいながらも楽しそうだ


「瑠夏ちゃん、頑張り屋さんだね。」


「お前も少しは瑠夏を見習えば?」


「お前、酷いこと言うな。俺だって必死なの」


瑠夏と付き合い始めたというのは圭輔達にも報告した


捺稀は“良かったね”って言ってくれたが…


圭輔は“お前に瑠夏ちゃんってもったいない”とぼやいていた


「圭輔!!ちゃんと勉強しな。勉強してなかったらあんたの好きなクッキー焼いていかないんだからね」


…捺稀がキレてる


捺稀って瑠夏には優しく教えてるけど圭輔にはスパルタなんだよな
「はい。ごめんなさい」


キレた捺稀には圭輔でも叶わないらしくしょんぼりとしていた


俺はそんな圭輔を見るのが面白くてたまらない


でも、マジギレした捺稀は俺達でも止めることは
出来ない


「丈瑠君。次、頼むね?」


捺稀は態度をガラッと変え俺に接してきた


教える教科が決まっていて…


捺稀は数学と英語、俺は日本史と世界史、理科系


って言いながらもこの学校の授業はほとんどプリントだから…


プリントの内容を理解すれば大体解けるようになる


「このプリントを写せば良いんだよね?」


「あぁ、後は暗記するだけだ」


瑠夏は黙々とプリントの答えを写していく


「瑠夏ちゃんもこんな奴の何処を好きになったのかな?こんな素っ気ないヤツ」


ブツブツ言いながら問題を解いて行く圭輔
「お前、俺に殴られたいか?」


「いいえ。ごめんなさい」


圭輔は俺と捺稀には叶わないみたいだ



「丈瑠、終わったよ。これで良いよね?」


念のためチェックする


圭輔が静かになって1時間くらい経った頃、瑠夏が全てを写し終えた


「よし、良く頑張ったな」


俺は瑠夏の頭を撫でる


“エヘヘッ”と笑顔を見せる瑠夏が可愛くて仕方ない


瑠夏と接して感じたこと


それは“褒めてあげること”が大事ということに気付いたんだ


瑠夏は褒めれば伸びるタイプ


実頼さんとの喧嘩が多かったりで…


瑠夏は笑うことを忘れてたみたいだ


褒めてあげると今までに見たことのない笑顔で微笑んでくれた


笑うと更に可愛くなる


そんな瑠夏が好き


俺の隣で笑っててほしい
「丈瑠って本当、瑠夏ちゃんには優しすぎる。俺にも優しくしてよ~」


隣で駄々をこねる圭輔


「いや、お前には無理だ
わ」


長年一緒に居るとお互いに性格を知ってるから接し方がキツくなる


それに瑠夏は彼女だし?


優しくしなきゃな


「瑠夏、今日の分は終わったみたいだから帰るけど?」


瑠夏が片付けてるのを見て圭輔は焦りだした


「待って、俺も帰る」


これは捺稀の厳しい勉強時間が待ってるな…


圭輔、お疲れ…


「瑠夏、帰ろうか」


捺稀は瑠夏には優しい


圭輔には勉強に関しては厳しい


圭輔と捺稀って勉強以外の時は仲良いのに


前に捺稀に“何で瑠夏に優しくするのか?”聞いたことがある


そしたら““瑠夏は優しいからあたしもそれに答えてあげるの”とか言ってたっけ?
今日はバイトが休みらしくこれから瑠夏と買い物に行く予定


沙穂がもうすぐ4歳の誕生日なんだ


瑠夏とプレゼント探しに行くってわけ


「瑠夏、良いなぁ…今から丈瑠君とデートだなんて。羨ましい」


捺稀は圭輔を見ながら呟いた


「圭輔ってね、何処にも連れてってくれないんだよ~」


「お前、連れてってないのか?」


圭輔は“しまった”という顔をした


「当たりだな」


コイツ何かあったら舌を出すから


「だって、しょうがないじゃん?俺だって連れて行きたいんだけど居残りがな…」


「それは圭輔君が提出物を出してないからだよ」


瑠夏にも言われてるし…


「丈瑠君っ」


……げっ、来た


学校からの帰り道。


いつものように途中まで4人で帰ってたら藤室に遭遇してしまった
瑠夏を見ると俺の手を強く握っていた


「何で咲那が居るの?」


「居たって良いじゃん。あたしが丈瑠君に会いたかったんだもん」


……にしてもしつこい。


藤室は瑠夏の手を解き俺にくっついた


「お前、瑠夏になんてことしてくれんの?」


「別に良いじゃん。瑠夏って彼女じゃないんでしょ?」


コイツ、上目遣いしてるけど瑠夏の方が可愛いって…絶対!!


「いや、彼女だよ?」


俺達のやり取りを見てられなかったのか捺稀が口出しした


「瑠夏は丈瑠君の彼女。だから、どいて。丈瑠君の隣は貴女じゃなく瑠夏専用なの」


という捺稀の声は一段と低いような気がした


瑠夏は捺稀に抱き着いたまま


「これから用事あるしお前に構ってる暇はない」


とにかくこの雰囲気から瑠夏を解放させてやりたかった