「ねぇ…丈瑠。1つ我が儘言って良いかな?」
「俺に出来ることならなんでもどうぞ」
----ドキッ///
「あのね…気分転換にお散歩行きたいの」
「確かに病室ばっかりだとつまらないもんな。連れて行ってやるよ」
「ありがと」
丈瑠をちょっと見る良い機会になりそうだ
「ただいま~。はいどうぞ」
捺稀はあたしにお茶を丈瑠にコーヒーを手渡した
「今日はこれくらいしか出来ないけど…今から買い出しに行かなきゃいけないの」
“本当はもっと居て話したいんだけど…”
と寂しそうに言っていた
「良いよ。顔出してくれただけで嬉しい」
「ほんと…?」
「もちろん!!」
「良かったぁ…じゃあね」
捺稀は慌ただしく帰って行った
「帰っちゃった…」
なんか寂しいな
「瑠夏、散歩行くのか?」
「あっ、うん。行きたいな」
「ちょっと千絵さんに許可貰って来る」
丈瑠は千絵さんを探しに行ってしまった
だけどすぐに戻って来てくれた
「近くで遭遇して聞いたら中庭くらいなら大丈夫だってよ。車椅子借りて来た」
中庭に行けるだけで充分
外の空気吸いたかったから…
「ありがと。ごめんね」
「謝るなって。俺が瑠夏の役に立ちたくてしてることだから」
そろそろ返事しなきゃ…
この前、捺稀に相談して本当は気付いてたんだ
……丈瑠が好きなんだって。
だけど、怖くて認めたくなかった。
丈瑠と話してたりちょっとの言葉でドキドキしたり…
あたしでも恋したんだなって実感。
ねぇ…丈瑠。こんなあたしでも好きって言ってくれるの?
「座れるか?」
「うん。大丈夫」
あたしは車椅子に座る
中庭に着きベンチの前に車椅子を止め丈瑠はベンチに腰掛けた
花壇にはたくさんの花が植えられていた
「いつも丈瑠には甘えちゃってごめんね…」
「瑠夏って謝ってばっかりだよな。素直になれば良いのに…言ったじゃん。俺に頼れって。」
何処までも優しい
でも、あたしはその優しさに惹かれたの
丈瑠はありのままのあたしを受け入れてくれた
だから、素直になろうって思えたの
「ねぇ…丈瑠。前々からの返事して良い?」
「答え出たのか?」
あたしは小さく頷いた
「好き…だよ?」
恥ずかしくなって顔を伏せた
「瑠夏、顔上げて?」
……えっ?
顔を上げた途端キスされていた
「いきなり好きって言うなんて不意打ちすぎるんだよ」
少し丈瑠の顔が赤いような気がする
「こんなあたしなんかでも良いの?」
「瑠夏だから良いの。俺、瑠夏しか見てないからな?」
“瑠夏しか見てない”って言われたら恥ずかしい
「不安定になること多いよ?」
「分かってる。俺が傍にいる」
「あたしを選んでくれてありがとね」
「こちらこそ」
あたし達は笑いあった
「強がらずに素直になろうな?」
ポンポンと頭を撫でる丈瑠。
凄く落ち着くんだ
丈瑠の前なら素直になれる気がする
「もう遅いし戻るか」
丈瑠は車椅子を押してくれた
部屋に戻るとテーブルの上に夕食がおいてあった
その夕食を食べ終えると千絵さんがやって来た
「瑠夏ちゃん、お風呂入りに行こうか?」
あたしの表情を見て悟ったのか…
「俺は此処に居る」
あたしは千絵さんに手を引かれお風呂場へ向かう
「丈瑠君って瑠夏ちゃんには優しいのね」
「ついさっき付き合い始めましたけど…」
千絵さんには報告したって良いよね
「本当?おめでと」
「ありがとうございます」
「良かった。丈瑠君って素っ気ないから光莉が悩んでたのよね。」
千絵さんと他愛のない話をしてお風呂に入り部屋に戻る
「丈瑠君、寝てるみたいね?」
部屋に入って見ると椅子に座ったままベッドに伏せて寝てる丈瑠の姿
疲れてるんだね
なのに、あたしの為に頑張ってくれて…
君は何処まで良い人なんですか?
あたしは丈瑠にタオルケットを掛けて丈瑠の寝顔を見ながら眠りに就いた
いつも君に笑っていて欲しくて。
しつこいくらいに優しくした
君は半信半疑だったけど俺がしたいからするんだよ
“好き”って言ってくれた時には驚いたけど…
やっと想いが通じたんだ
俺を選んでくれてありがとう
丈瑠Side
瑠夏と付き合い出して数日
母さんと親父に報告したらめっちゃ喜ばれた
2人とも瑠夏のこと気に入ってるからな…
それに俺が彼女作るなんて思ってなかったみたいで。
ビックリされたんだ
沙穂も嬉しくて跳びはねてたっけ…?
“お姉ちゃんが出来た”って…
もちろん忠弘さんにも報告した
本当は忠弘さんは瑠夏を離したくないことも俺は知っていた
でも、瑠夏が安心するのならという理由でOKしてくれた
実頼さんには報告しにくかった
瑠夏は無事退院しバイトを頑張ってる
“来れなかった分まで頑張らなきゃ”って…
無理しなくて良いのに。
退院してからは俺ん家に居る
母さんと忠弘さんとで話し合った結果だそうだ
瑠夏が居ることで沙穂は大喜び
瑠夏は大変なのに必ず沙穂の相手をしてくれる
そして今は夏休み
今日も休みだけど学校へ行く
夏休みなのに学校へ行く理由?
瑠夏の付き添い
捺稀と圭輔も一緒だけどな?
瑠夏が入院して出れなかった授業の内容を俺達で教えてるってわけ。
ついでに圭輔にも教えなきゃいけねぇんだよ。
アイツ頭悪いから。
多川と笹川に頼んで東棟の空き教室を1つ借りている
俺ら4人しかいないから静かではあるが…
語ったり休憩を交えたりしながらしてる
それは圭輔の集中力が続かないから
コイツすぐに集中力切れるんだよね
瑠夏は遅れを取り戻そうと必死なんだけど…
「ここがこうなってこの公式を使うの」
「あぁ~分かった。こうすれば分かりやすいんだね。ありがと」
瑠夏は捺稀の教え方で大体は理解しているようだった
「瑠夏、覚え早いね」
「それは捺稀の教え方が上手いからだよ~。あたし勉強嫌いだからね」
「あら、そう?」
「うん、あたし…何回も聞かなきゃ分からないんだけど捺稀の教え方はすぐ理解出来る」
勉強嫌いっていいながらも楽しそうだ
「瑠夏ちゃん、頑張り屋さんだね。」
「お前も少しは瑠夏を見習えば?」
「お前、酷いこと言うな。俺だって必死なの」
瑠夏と付き合い始めたというのは圭輔達にも報告した
捺稀は“良かったね”って言ってくれたが…
圭輔は“お前に瑠夏ちゃんってもったいない”とぼやいていた
「圭輔!!ちゃんと勉強しな。勉強してなかったらあんたの好きなクッキー焼いていかないんだからね」
…捺稀がキレてる
捺稀って瑠夏には優しく教えてるけど圭輔にはスパルタなんだよな