2度、大きく水しぶきが上がったと思った後は、何事もなかったかのようにまたいつもの静かな海に戻っていた。


僕は幻を見たのだろうか?


もう一度さっきの水面を見つめていると、砂浜に人影を感じた。


夕暮れかかった砂浜に女の子が一人立っていた。


長い髪は濡れていた。


「…あの…」


恐る恐る僕は声をかけた。


振り返った彼女は泣いていた。


「…あっ、あの…ど、どう、どうしたの」


泣いている彼女を見て、僕は思わず言葉に詰まってしまった。


「…」



彼女は涙を拭うこともなければ、何も話すことなくただ立っていた。