先生が帰ったあとで僕は自分の部屋でもう一度彼女の写真を見つめた。
やっぱりこの写真を見ていると自分を見ているような気がする。
変だよな。
自分は陸上競技ばかりだった。まぁ、その時も全く泳げないわけじゃなかったけれど水泳のセンスはゼロに近い方だった気がする。
そして、足がこうなってからは水に入るなんて気は持てなかった。
病院の先生は水中は浮力もあるからリハビリにもなるからって勧めてくれたけれど、何となく不安で避けて通っていたように思う。
そんな僕なのになぜ泳いでいる彼女を自分のように思えるんだろうか…
写真をしまおうと机の引き出しを開けた。
…あっ…これっ…
引き出しの隅に小さいガラスの欠片を見つけた。
…懐かしいな…確か…人魚の涙だっけ…
信じているつもりもないけれど、まったく嘘だったとも思えないような気がする。
願いが叶う…か…
「他の人に言ってはだめ…秘密…だからね」
あの時の声が聞こえた気がした。
僕は写真の上にそっとそれをのせ引き出しを閉めた。