一枚目の百円を入れた後だった。


「しまった…」


肩から下げていたカメラが邪魔をした。僕はもう一枚の百円玉を転がしてしまったのだ。


…しょうがない…


あきらめて、もう一度財布から取り出そうとした時、


「…そこに落ちてる…」


ジャージ姿の女の子はそう言ってこっちに近寄ってきた。


「あ…ありがと…」


彼女は長い腕で壁の横に落ちていた百円を拾い、


「何、飲むの?お茶はお弁当でさっき飲んで飽きたから、うーん、スポーツドリンクって
ところかな」


と言って、その百円を販売機に入れた。


「…そう…です…」


彼女はボタンを押し、出てきたジュースとお釣りを僕に差し出した。


「ありがと…」



…不思議な子だ…僕はもう一度お礼を言って彼女の顔を見た。