気がつくと夢中で彼女の泳ぐ姿を撮っていた。
 


  ワー  っとひときわ大きな歓声が上がった。



電光掲示板には 大会記録のマークが彼女の六コースの欄にタイムと共に表示されていた。


息を微塵も乱していないように彼女は見えた。


一度深く水中に潜り、コースロープを手に顔をあげた。


小さく何か言ったように見えた。


大会新を出したっていうのに、彼女は表情一つ変えず、それどころか自分の記録をみるこ
ともなくプールから上がった。


キャップを外し、タオルを頭からかけ体の水を拭く。


その様子はさっきまでの水中にいるのとは別人に見えた。


水が自分の体を覆っていることがとても耐えられないようなしぐさだった。





笹本ルカ  …ルカ…   彼女の名前を知ったのはこの時だった。