…パン…


はじけるようなピストルの音と共に水しぶきと歓声が会場中に響き渡った。


「…すげぇ…」


競泳なんて詳しくない僕でも、その泳ぎがすごいことが分かった。


…水があの子を押してくれているようだ…


…いや、水があの子を引っ張ってくれているみたいだった…


…泳いでいるというより、水中を飛んでいるようにみえた…


…あの子、水に愛されてるんだ…そして、あの子も水を愛している…


なんだか不思議な気分に包まれていた。


それは三年前まで僕が持っていた感覚だったからだ…


僕は風に愛されていた。そして、僕も風に乗ることを愛していた。



そう、あの日までは…