朝六時…もう学校の桜の木から蝉の鳴き声が聞こえる…


「今日はよろしくなっ…」


「は、はい」


「あのさ、それでなんていうか、ほらっ、今あるだろ。撮った写真を本みたいなアルバムにするやつ…」


「…フォトブックですか?…」


「そう、そう、それ。そのブックにおまえんちでできるか?頼むよ、なっ。三年生最後の大会だから思い出にさ」


…やっぱり…


腕よりも写真屋の息子ってことでじゃねーか。


まぁ、でも写真を撮るのは好きだから…な。


それに、試合ってのも…な。


首から下げているカメラに手をおきながら、揺れるバスから見える風景を見ながらそう思った。




競泳場に着くと、昨日から泊まりの先発隊が待っていて、僕らは観覧席の一番前に荷物を置いた。


ドーム型の室内競泳場は熱気でいっぱいだった。


―自分を信じて―  


―最後まで 気迫― 



なんていう、くさい言葉が書かれている横断幕。


こんな感じなんだか久しぶりだな。



僕だって、鉢巻き締めていたんだしな…


苦笑いをしながら観覧席につく。


カメラをさげた自分の方が恥ずかしくなるような気合の入った会場だった。