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雪詩は、ひたすら走っていた…。


走り続けていた――。



「――遅れて申し訳ありません!」



深々とお辞儀をする雪詩の目の前には、ノートパソコンと、にらめっこしている店長の広戸(ヒロト)が居た。


「ふぅ――。やっと終わった。……あ、雪詩ちゃん遅刻したの?仕方ないな〜。今日は特別に許してあげるよ。今後は、このようなことは無いようにね」


広戸は雪詩を見つめると、やんわりと返事を返した。


「――あ、はい。……では、失礼します」


「あ、ちょっと待って。」


「はい?」


「……あの男の子とは、どうなったの?」


「え、あの男の子って…炉惟さんのことですか?」


「うん、そう。…ロイって男の子とは、うまくいってるのかい?――」



「………私、炉惟さんに嫌われてるみたいです。」



広戸の質問に胸がチクリと痛んだが、悟られないように、わざと笑ってみせた。


「……え?」



「……仕事があるので、これで失礼します。」


驚く広戸に、これ以上は詮索されたくなかったので、雪詩は無理やり話を中断させて出て行った。