昨日、真っ黒だった長い髪の毛を脱色したばかりだ。


南高は一応進学校で、校則だってわりと厳しい。


でも、最初が肝心なのだ。


先生に注意されようが、先輩から目を付けられようとも、やっちまったもん勝ちなのだ。


それらは覚悟の上で、昨日、潔く脱色した。


これしきのことで怖じ気づいていちゃ、青春てやつを謳歌できるものか。


「しょうがねい! あたしは行くぞ! 結衣はここで待ってな」


そう言って、あたしは真下のアスファルト目掛けて、一気に、跳んだ。


「アーアアーッ!」


ターザンみたいに。


鉄格子をスニーカーで蹴った瞬間、結衣の悲鳴が遠くに聞こえた。


風を切りながら、あたしは両足でしっかりと着地した。


ショートパンツにロンTに、スニーカー。


動きやすい服装で大正解だった。


「はいっ!」


体操選手が技を決めた時みたいに両手を広げて、ポーズを決めた。


振り向くと、鉄格子越しの結衣が小さな両手で顔をすっぽり覆っていた。


「ヘイ! 結衣」


着地した時の衝撃は思ったより大きく、少しだけ足がジンジンと痺れていた。


結衣は恐る恐る広げた指の隙間からあたしの無事を確認すると、


「もーっ」


力尽きたようにそこにぺたりと座り込んだ。