ずっと、一緒だったから。


こんな当たり前の事に気づけなかった。


明日は当たり前のように来るものなんだって、思っていたから。


本当に、まだ伝えきれていない事がたくさんあるのに。


でも、もう、どうにもならないみたい。


どうやら、あたしは行くべきところに行かなきゃならないらしい。


ごめんね。


約束をすっぽかして、勝手に行くあたしを、許して。


さよなら、補欠。


さよなら。


「翠……翠?」


母の声がする。


ものすごく、遠くに。


「すみません、お願いします! 早くっ……搬送してください!」


空に伸びるあたしの手を、母が捕まえる。


雪が、粉々に砕ける。


体がふわりと浮いた。


本当にもう……さよならだ。


「受け入れ要請」


「17歳、女性。名前は吉田翠さん。脳に持病あり。髄膜腫を患い、通院している方です。受け入れお願いします」


「こちら南台大学病院です。患者の受け入れを許可します」


「了解。直ちに向かいます」


「了解、バイタルは」


「血圧、心拍数、体温、共に低下。血圧、120の90。心拍数……」


「意識レベルが急激に低下しています」


なんだ。


やかましいな……もう少し静かにできないのか。


あたしは疲れてんのに。


「お母さん、落ち着いてください。これより、南大大学病院へ緊急搬送します」


うっせえなあ……。