だって、こればっかりはしょうがないじゃないか。


これがあたしの、吉田翠の人生なのだ。


我が人生に、悔いはないよ。


分かってくれよ、母。


ごめん、母。


……お母さん。


あたし、少しも親孝行なんてできなかったけど。


全然、いい子じゃなかったけど。


今更、後悔するだけ無駄なんだけど。


もっと早いうちに親孝行のひとつでもしとけば良かったなあ……。


ごめん、お母さん。


「すみません! こっちです、こっち!」


車から降りて来た救急隊員のひとに、母が大きく手を振った。


「……いいっ」


あたしはその手をつかんで、首を振った。


もう、いいんだ。


お母さん。


「何言ってんの! このアホ」


ほんと、どあほうだ。


でも、あたしには分かるんだ。


あたし、もう、どうにもならないんだってこと。


「倒れたのは、お嬢さんですか?」


救急隊員の人が大きなバッグのような物を下ろして、あたしを見つめてくる。


担架が隣に下ろされた。


ぽろぽろ、涙があふれた。


「たのむ……よ……おねが……」


隊員たちがあたしを担架に乗せようとした時、


「……ま……待って! ちょっと待ってよ! 待ちな!」


あたしをぎゅううっと抱きしめ、母が抵抗した。